中国・河南省鹿邑(ろくゆう)県で2025年12月25日午前6時ごろ、走行中のトラックが横転し、積み荷の一部が周囲の人々に持ち去られる出来事が起きた。事故直後の様子を捉えた動画がネット上に広まり、過去にも何度も起きてきた同様の出来事と重ねて、再び議論が起きている。
事故は、トラックが道路脇に停車していたレンガ運搬車と衝突したことで発生し、双方の車両が損傷した。横転したトラックには、石けんやシャンプー、洗剤などの日用品が積まれており、衝突のはずみで多くが路上に散乱した。周囲にいた人々が次々と集まり、「持っていくな」と制止する声が上がったものの、それを無視して荷物を抱え、現場を離れる姿が相次いだ。
この件について、地元警察は事実関係を認めていると、中国メディアが報じている。
ネット上では今回も多くの声が寄せられた。「昔は村でトラックが横転すれば、皆で拾って守ったものだ」「親から人の物を取るなと教えられてきた。今の光景は理解できない」と、戸惑いや批判の声が目立つ。一方で、「事故自体は珍しくないが、こうした行為が近年本当に増えてきており、心が痛む。子どもたちに何をどう教えればいいのか分からなくなる」と、気持ちを吐露する書き込みもあった。
こうした出来事は、今回が初めてではない。
近年、中国では似た出来事が各地で繰り返し報じられている。
2025年10月には、成都マラソンの後、沿道の補給所に残った箱入りのミネラルウォーターなどが通行人に持ち去られ、現場スタッフの制止も効かなかったという。
2025年7月には山東省曲阜市で、物流会社のトラックが横転して橋から転落し、十数トンの冷凍貨物が周辺住民に持ち去られ、損失は40万元(約900万円)に達したとされた。
さらに2025年6月20日、江蘇省徐州市では農家の桃畑が荒らされ、桃が近隣住民に持ち去られた。同じ日、安徽省宿州市でもジャガイモ畑で、作物が集団で持ち去られる出来事が起きている。
2025年6月初めには広西チワン族自治区南寧市で、スイカ畑に人が押し寄せ、農家が「人が多すぎて止められない」と訴える出来事もあった。

こうした現象について、時事評論員の李林一氏は、「以前は比較的まれだったが、ここ数年で目立つようになった」と指摘する。
その背景として、第一に、中国共産党の統治下で道徳意識が全体的に低下していることを挙げる。無神論が広く浸透し、因果応報を信じない人が増えた結果、他人への配慮や行動の結果を考えずに振る舞う人が多くなったという。
第二に、経済の悪化がある。収入が減る中で、道徳的な歯止めが弱まり、目先の利益を優先する行動が起きやすくなっていると李氏は分析する。
今回の河南省の事故現場で見られた光景は、こうした変化が積み重なった結果ともいえる。事故現場は本来、助け合いが求められる場所だ。しかし中国では、その前提が少しずつ崩れ、当たり前だったはずの行動が失われつつある現実が、改めて浮き彫りになった。


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