マドゥロ拘束後 ベネズエラで中国に数十億ドル規模の損失の可能性

2026/01/14 更新: 2026/01/14

米軍の作戦によりベネズエラの石油はワシントンへ振り向けられ、中国の原油担保の融資とそれに依存していた製油所は危機にさらされている。

ベネズエラ指導者ニコラス・マドゥロ氏がカラカスで拘束されたことにより、ベネズエラの石油は誰に売られ、どのように利用されるのかを、米国が実質的に主導できる状況となった。

結果として米国は、世界最大の確認原油埋蔵量を事実上コントロールする立場に立った。これは、西半球における中国・北京にとって最も重要なエネルギー供給ルートの一つを断ち切ることを意味する。

米軍に身柄を拘束される数時間前、マドゥロ氏は中国政府特別代表の邱小琪と会談し、ベネズエラと中国の「兄弟のような関係」を称賛していた。

その関係は主として石油によって築かれており、長年にわたり、ベネズエラ産原油の大半は中国に向けて輸出され、エネルギー供給、債務、外交、そして政権存続を結びつける関係の中核を成していた。しかし、その関係は急速に崩壊した。

マドゥロ氏の後継者となったデルシー・ロドリゲス氏は、就任から数日以内にワシントンに対してより融和的な姿勢へと転じ、共通の開発目標に基づく米国との協力を呼びかけた。

2026年1月7日、ドナルド・トランプ米大統領は、ベネズエラ暫定当局が制裁対象となっている原油最大5千万バレルを米国へ移送すると発表した。

米国エネルギー情報局(EIA)によれば、ベネズエラは約3030億バレルの確認原油埋蔵量を保有しており、これは世界全体のおよそ17%に相当する。この数字は、サウジアラビアの2670億バレル、イランの2080億バレルを上回る(World Population Reviewのデータに基づく)

しかし、長年の経営不全と制裁で生産は壊滅的な打撃を受け、国際安全保障戦略行動ネットワークによれば、2025年末時点で日量約110万バレルにまで低下した。これは1990年代後半の日量約350万バレルから大幅に減少した水準である。ウォール街は、生産回復の余地があると見ている。

JPモルガン・チェースは1月8日の報告書で、新政権の下では2年以内に生産量が日量130万〜140万バレルに増加する可能性があると試算した。

ゴールドマン・サックスのアナリストは1月5日のインタビューで、生産量が日量200万バレルに達した場合、世界の原油価格は1バレル当たり約4ドル下落する可能性があると予測した。これは米国の消費者にとっては追い風となる一方、他の産油国にとってはデフレ的な衝撃となる。

超重質原油

ワシントンにとっての獲得物は、単なる数量ではなく品質でもある。ベネズエラ産原油の多くは、同国東部に集中する重質原油および超重質原油である。この種の原油は混合や特殊な精製処理を必要とするが、多くの米国製油所はまさにこの原油を処理できるよう設計されている。

長年にわたり、米国の精製業者は、カナダ、メキシコ、コロンビアから輸入した重質原油を国内産の軽質原油と混合し、ディーゼル燃料やジェット燃料を効率的に生産してきた。

この供給源を確保することは戦略的な空白を埋め、米国のエネルギー安全保障を強化すると同時に、カナダやメキシコを含む他の重質原油供給国に対するワシントンの交渉力を高めることになる。

北京にとっての「600億ドルのブラックホール」

北京にとって、今回の結果は極めて厳しい。

コロンビア大学が1月7日に発表したエネルギー政策分析によれば、中国は2007年以降「原油担保融資」と呼ばれる枠組みを通じて、約600億ドルをベネズエラに融資し、ベネズエラへの「最後の貸し手」として振る舞ってきた。

現在、米国がベネズエラの原油流通を主導する立場にあるため、中国は100億〜120億ドルと推定される未回収融資のほぼ全額を失う可能性があると、同分析は指摘している。

2023年時点で、ベネズエラの原油輸出の約68%は中国向けであり、その多くは債務返済に充てられていた(EIAのデータによる)。被害は国家間融資にとどまらない。

中国石油天然気集団(CNPC)や中国石油化工(シノペック)といった中国の国有大手企業は、ペトロレラ・シノベンサなど、数十億バレル規模の埋蔵量を含むプロジェクトに出資し、合弁事業や開発権益を保有しているが、現在それらの法的・商業的地位は不透明な状況にある。

中国の民間企業も影響を受けている。昨年10億ドル規模の投資計画を発表したChina Concord Resources Corp.をはじめ、Kerui Petroleum、Anhui Bhring Petroleum Groupは、最近、ベネズエラ国営石油会社PDVSAと契約を締結していた。

これらの契約は、現在ではほぼ無価値になる可能性が高い。

また、割安なベネズエラ産原油に依存していた中国国内の独立系「ティーポット製油所」も、安価な原料供給源を失った。

米国の石油大手が再参入へ

米国の石油会社は、ベネズエラへの再参入を準備している。
コノコフィリップスやエクソンモービルといった企業は、前指導者ウゴ・チャベス政権下で収用された資産を巡り、数百億ドル規模の仲裁請求を長年追求してきた。

1月9日にホワイトハウスで行われた米国石油業界幹部との会合で、ドナルド・トランプ大統領は、ベネズエラの石油産業を再建するための投資拡大が優先事項であると強調した。トランプ大統領は、長年の法的問題や収用問題の解決は、過去の企業請求にのみに焦点を当てるのではなく、生産回復というより広範な関与と結び付けられるべきだと示唆した。

この会合の中で、ドナルド・トランプ大統領は、石油会社がベネズエラのインフラ再建と原油生産拡大のために、少なくとも1千億ドルを投資すると述べた。

総合すると、米国は自国の製油所が必要とする重質原油へのアクセスを確保し、西半球における中国のエネルギーおよび金融上の立場を弱体化させ、さらに中国共産党政権が影響力行使に利用し得た数百億ドルを、一挙に失わせたことになる。

カナダを拠点とする記者。アジア太平洋ニュース、中国のビジネスと経済、米中関係を専門としている。
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