中国共産党(中共)政府が拡大を進める監視衛星ネットワークは軍事衝突への利用を前提として設計されており、インド太平洋地域および世界にとって重大な課題となっていると、専門家が警告した。
読売新聞は15日、これらの情報収集衛星とみられる機体は、日本上空を1時間当たり約6回通過していると報じた。
同紙は、米宇宙軍が公開している追跡データを分析し、中国の偵察衛星群「遥感(ヤオガン)」のうち10機が、自衛隊および米軍が運用する日本国内の基地上空を約2時間で周回していることを明らかにした。
これらの衛星は南シナ海やグアム上空も通過している。
さらに、2025年12月時点で、過去3年間の軌道高度の調整状況から、160機の遥感衛星のうち約80機が稼働状態にあることが確認されているとした。
中共は2006年に遥感1号を打ち上げて以降、シリーズを拡充しており、中国国営メディアCGTNによれば、最新型の遥感50号02は3月15日に打ち上げられた。
米国を拠点とする軍事技術アナリストのマーク・カオ氏は、中共の大規模な衛星群について、高・中・低軌道を網羅する形で拡張され、包括的な監視能力を確立している点が懸念材料だと指摘した。
カオ氏は「中国は現在、米国に次ぐ世界第2位の偵察衛星保有国であり、光学、赤外線、合成開口レーダー(SAR)を組み合わせ、全天候型の地上観測能力を実現している」と述べた。
カオ氏は、遥感衛星が中国共産党軍(中共軍)による現代戦の変革および習近平が掲げる「情報戦での勝利」に向けた取り組みにおいて中核的役割を担っていると指摘したうえで「これらの偵察衛星の最終的な目的は当然ながら軍事衝突への活用にある」と述べた。敵の配備状況に関する大量のデータを保有することで、高価値目標の特定や攻撃効果の評価に不可欠な事前情報を提供すると説明した。
またカオ氏は、これらの衛星は平時においても対抗勢力の監視能力を強化できると指摘し、敵の人員や装備の移動、新たな戦力配備の状況を把握するなど、包括的な状況認識を可能にすると述べた。
さらにカオ氏は中共政府がこのネットワークを同盟国への情報提供にも活用しているとし、ロシアがウクライナ戦争で遥感の画像に依存し、イランも湾岸諸国における軍事目標の特定に中国の宇宙偵察を活用していると指摘した。
その上でカオ氏は「中国、ロシア、イラン、北朝鮮からなる反西側ブロック『CRINK』において、中国共産党が情報資源の中核的供給者となっていることは明らかだ」と述べた。
読売新聞によれば、稼働中の約80機の衛星は主に北緯35度から南緯35度の範囲で運用され、台湾上空も含まれている。
読売新聞は、日本政府が中国が台湾有事の際に日本および米国の動向を監視する目的でこの衛星網を活用する可能性を懸念し、動向を注視していると伝えた。
台湾は自ら統治する民主主義体制を有するが、中共はこれを統治したことはなく、武力による統一を辞さない姿勢を示している。
カオ氏は、台湾海峡が中共にとって中核的な戦略焦点であるため、中共軍は必然的にこの衛星ネットワークを用いて、日本と台湾を含む「第一列島線」の監視を強化していると指摘した。この第一列島線は、中共の海空軍が太平洋に自由に展開することを制約する戦略的緩衝帯とされる。
そのうえでカオ氏は、中共が台湾攻撃を決断する時期とは無関係であるとしつつ、軍事作戦の成功を確保するためには、事前に適時のリモートセンシング情報を確保することが不可欠だと述べた。
米情報機関コミュニティは18日に報告書を公表し、中国が2027年に台湾へ侵攻する計画は現時点で存在せず、軍事力を用いずに統制を図る意向であると分析した。
この見解は、2025年の米国防総省年次報告書が、中国は2027年までに台湾を巡る戦争を遂行し勝利する能力の確保を目指しているとした分析とは異なる評価となっている。
戦略国際問題研究所(CSIS)の航空宇宙安全保障プロジェクト副ディレクターであり、防衛・安全保障部門の上級研究員であるクレイトン・スウォープ氏は、遥感ネットワークにより中共政府がインド太平洋全域で監視範囲を拡大していると指摘した。
スウォープ氏は「中国は軌道上における偵察衛星の保有数を増やし続けており、急速なペースで打ち上げを継続している」と述べた。
さらにスウォープ氏は、これらの衛星が中共軍の統合作戦において重要な役割を担い、中国との潜在的な紛争において相手側の戦力にとって脅威となると指摘した。
カオ氏は、中共の監視能力の拡大により、米国およびインド太平洋の同盟国の地上配備がほぼ全面的に継続的監視下に置かれることになるとし、「重大な挑戦」であると述べた。
その上でカオ氏は、中共がインド太平洋で大規模攻勢に踏み切る場合、地域の米軍基地を優先的に攻撃する必要があるとし、標的の優先順位付けと分類が勝敗を左右する決定的要因になると指摘した。
またカオ氏は、初動攻撃や後続作戦で破壊すべき目標の特定や、装甲貫通弾や空中爆発弾の使用判断には、徹底した事前の偵察情報が不可欠であると述べた。
カオ氏は、中共の宇宙技術の進展は中共が西側の同盟国であれば国際社会に利益をもたらし得たが、現実にはインド太平洋のみならず世界全体に対する重大な脅威となっていると指摘した。
その上でカオ氏は「中国共産党は自由民主主義の価値観に敵対的であり、西側の資本と技術を利用して自らを強化している。その宇宙能力の急速な発展は、民主主義体制を破壊する最終目的に資する手段となっている」と述べた。
さらにカオ氏は、中共政府が世界各地の権威主義体制との連携を強める中で、この衛星ネットワークは開発ではなく不安定化のための手段として利用される可能性が高まると警告した。
カオ氏は「このシステムは将来的に、ならず者組織や国家によるテロ攻撃の実行を支援するために利用される可能性がある」と述べた。
そのうえでカオ氏は中共の衛星能力の拡大は、世界をさらなる紛争へと引き込み、世界の安全保障を深刻に損なうと述べた。

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