米財務長官がイラン石油販売を許可 ドル決済と制裁が支配する原油市場

2026/03/21 更新: 2026/03/21

米国のスコット・ベッセント財務長官は20日夕、財務省が特定条件下で短期的な許可を発出し、海上に滞留しているイラン産石油の販売を30日間認めると発表した。米国とイスラエルがイランに対する軍事行動を展開する中、エネルギー市場の安定を図る措置である。

米財務省は、ニューヨーク時間20日午前0時1分以前に船舶へ積み込まれたイラン産石油および石油化学製品に限り、販売を認める一般許可を発出した。今回の措置は、原油価格の高騰に対応するためトランプ政権が講じたものである。

ベッセント財務長官はXで、「米国は経済力と軍事力を活用し、世界のエネルギー供給を最大限確保し、市場の安定を維持する」と表明した。また、中国が制裁下のイラン産石油を低価格で蓄積していると指摘し、既存供給を市場に放出することで約1億4千万バレルの供給増を見込むと説明した。

なぜ米国は他国の石油取引を左右できるのか

今回の措置の背景には、米国が国際金融システムにおいて極めて強い支配力を持つ構造がある。

第一に、原油取引の大半は米ドル建てで決済される。ドル決済は最終的に米国の銀行システム、特にニューヨークの決済網を通過するため、米政府はその流れを監視・遮断する権限を持つ。

第二に、米財務省の外国資産管理室(OFAC)は、制裁対象国との取引に関与した企業や金融機関に対し、ドル取引の禁止や米国内資産の凍結といった措置を科すことができる。このため、たとえ第三国の企業であっても、米国の制裁に従わなければ国際金融市場から排除されるリスクを負う。

第三に、海上に滞留している石油の多くは、制裁により正式な販売や保険、決済ができず「宙に浮いた状態」となっている。米国が今回のように「一定条件下で販売を認める」と許可を出すことで、保険・輸送・決済が可能となり、市場に供給が戻る仕組みである。

すなわち、米国は石油そのものを所有しているわけではないが、決済・保険・物流というインフラを握ることで、実質的に取引の可否を左右できる立場にある。

今回の許可は4月19日午前0時1分まで有効であり、新規生産分は対象外とされる。対象はあくまで既に輸送中の石油に限定される。

ベッセント財務長官は、この措置によりイランが収益を得ることは困難であるとし、米国は引き続きイランの国際金融アクセスに最大限の圧力をかける方針を示した。

世界の原油価格は同日、1バレル=112ドルを上回り、2022年半ば以来の高水準となったが、トランプ大統領が対イラン軍事行動の段階的縮小に言及したことを受け、時間外取引では下落した。

トランプ大統領は同日、中国や日本、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ホルムズ海峡の安全確保への関与を求め、「海峡を利用する国々が責任を分担すべきだ」と述べた。

さらに大統領は、イランの状況について「軍事的観点では壊滅的な状態にある」との認識を示した。

米政権はこれまでに約4億4千万バレルの供給を市場に追加する措置を進めてきたとしており、今回の決定もその延長線上に位置付けられる。エネルギー市場を巡る主導権争いは、軍事と金融の両面で続いている。

夏雨
関連特集: アメリカ政治