中国の大学で、専門知識よりも「政治の授業」を優先する動きが広がっている。
その中心にあるのが「マルクス主義学院」だ。共産党の思想や政治教育を教える学部で、日本の大学にはない中国特有の仕組みである。
これまでは一つの学部に過ぎなかったが、2026年に入り状況が変わった。中国教育当局が思想教育の強化を求めたことで、多くの大学がこの学部を「第一学部」と位置づけ始めた。
ここでいう「第一学部」とは、単なる名称ではなく、大学内で最も重要とする学部という意味だ。予算や人員を優先的に配分し、大学トップが直接関与し、関連する授業も最優先で実施するなど、大学運営の中心に据える位置づけを指す。
教育部直属の国立大学である北京交通大学では、思想教育を最重要と位置づけ、大学トップが学院長を兼任する体制に変更。教員養成で知られる伝統ある広西師範大学も、「第一学部」「第一学問」「第一科目」として最優先に据えた。こうした動きは地方大学や職業校にも広がっている。
背景には、思想教育を人材育成の中心に据える政府方針がある。大学だけでなく、小中学校まで一体で強化する流れも進んでいる。
実際、2012年にはマルクス主義学院は約100校だったが、2024年には約1900校に増加。わずか12年で約19倍に拡大している。
一方で、学生の反応は冷ややかだ。授業への関心は低く、形式的に出席するだけという声も多い。出席管理を強化しなければ学生が集まらないという現場の声もある。
大学は本来、専門知識や技術を学ぶ場である。しかし今、中国では「何を学ぶか」よりも「思想の管理」を優先している。知識も育つが、この流れが続けば、育つのは知識よりも、従順さかもしれない。
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