スペイン首相訪中 透ける経済狙いの対中接近 リスク指摘も

2026/04/17 更新: 2026/04/17

スペインのサンチェス首相はこのほど、中国を訪問し、北京の清華大学で演説を行い、気候変動や国際安全保障、人工知能などの分野で中国がより大きな責任を担うよう呼びかけた。一方で、独裁体制の国家が国際秩序を主導することへの懸念も指摘されている。

スペイン首相「中国は積極的役割を」 専門家は危険性指摘

4月11日から15日にかけて中国を訪問したサンチェス首相は、新華社の報道によれば、習近平との会談で「新冷戦」に反対し、「デカップリング(分断)」にも反対する姿勢を表明。欧州と中国の協力強化を支持すると述べた。

またロイターによると、同首相は清華大学での講演で、国際法の維持、核軍縮の推進、人工知能の管理、多地域での停戦促進において、中国がより積極的な役割を果たすべきだと強調した。

これに対し、台湾国防部系シンクタンク「国防安全研究院」の沈明室研究員は、この立場の危険性を指摘。「米国が中国共産党に対抗するのはイデオロギーの問題ではなく、その拡張主義にある。中共は、米国に対抗する新たな国際基準を構築しようとしている」と述べた。

さらに、「中共の価値観やモデルが米国に取って代われば、民主や自由の価値は影響を受ける。こうした独裁体制が世界秩序を主導することは極めて危険だ」と警鐘を鳴らした。

独立系評論家の蔡慎坤氏も、「放火犯にガソリンを渡しながら消防隊長を任せるようなものだ」と批判。中共がイランやロシアなどに対し長年、経済や外交面で支援してきた点を挙げ、「仲介者」としての役割を担うのは不適切との見方を示した。

経済目的の対中接近 持続性に疑問

経済紙「21世紀経済報道」は専門家の分析として、スペイン首相の訪中には経済と外交の双方の狙いがあると報道。サンチェス首相は中国からの技術導入や投資、貿易拡大を期待しているという。

しかし、国際通貨基金(IMF)は数週間前、スペインの2026年および2027年の経済成長見通しを下方修正しており、経済的圧力が強まっている。

米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」の報告によると、過去5年間で中国の対フランス・ドイツ投資は減少傾向にある一方、スペインへの投資は2019年以降増加している。

中共外交部の統計では、中共は現在、スペインにとってEU域外における最大の貿易相手国であり、2025年の二国間貿易額は550億ドルを超えた。一方、ロイターは、中国がスペインの貿易赤字の74%を占め、その赤字は4年で倍増し、2025年には約500億ドルに達したと報じている。

サンチェス首相は今回の訪問で農産品や工業製品の輸出拡大を図り、貿易不均衡の是正を目指す考えだ。

これについて沈氏は、「対中貿易赤字が急増する中、中国からの投資に頼って経済を立て直すのは、のどの渇きを癒すために毒を飲むようなもので、持続可能ではない」と指摘した。

米国との摩擦も顕在化

今回の訪中は、平穏な外交環境下で行われたものではない。スペインは今年3月、米軍によるイラン攻撃作戦「オペレーション・エピック・フューリー」への参加に際し、自国のロタ海軍基地およびモロン空軍基地の使用を拒否。この作戦を「一方的で危険な介入」と位置づけた。

また北大西洋条約機構(NATO)の枠組みでも、防衛費を国内総生産(GDP)の5%に引き上げる目標への明確なコミットを示していない。

これを受け、トランプ米大統領は、スペインが米軍行動に協力せず、NATO義務も果たしていないとして、貿易関係の全面的な見直しを検討していると発言した。

蔡氏は、「世界秩序が米国だけに依存すべきではないが、だからといってイランや北朝鮮、ロシアを長年支援してきた中共に期待を託すべきではない」と指摘。「戦争体制の国家を支える体制が、同時に信頼できる世界の安全保障の担い手になることは不可能だ」と強調した。

さらに、欧州連合(EU)内部でも、中共に対する警戒感は一段と強まっているとの見方を示した。

李淨
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