防衛省 認知戦を安全保障上の重要課題に 戦略的コミュニケーション強化へ

2026/06/27 更新: 2026/06/27

SNSやAI技術の発達により、武力だけでなく人々の認識や心理に影響を与える「認知戦」が、安全保障上の重大な課題となっている。防衛省が令和8年6月に資料を公表し、その中では、認知戦に対する危機感と、これを踏まえた戦略的な情報発信のあり方が示された。

防衛省は、ロシアによるウクライナ侵略を認知戦の典型的な事例として挙げている。ロシアは、西側メディアを模したなりすましサイトや偽のSNSアカウントを用い、「ウクライナ人が自国の都市を砲撃している」「NATOはウクライナを見捨てる」といった捏造記事を拡散した。また、ゼレンスキー大統領が降伏を呼びかける精巧なディープフェイク動画を流布し、一時的な混乱と不信感をあおった。

そうした認知戦に対し、ウクライナ側も戦略的な発信で対抗。政府公式アカウントを通じてリアルタイムの情報提供を行ったほか、広告代理店と協力し、国民の勇敢さをたたえるブランド戦略を展開した。さらに、偽情報の監視などを担う「戦略的コミュニケーション・情報安全保障センター(SPRAVDI)」を設立し、偽情報対策を進めた。

こうした事例を踏まえ、防衛省は「防衛省・自衛隊の活動の多くがメッセージ性を有するため、認知戦の側面を持ち得る」と認識している。AI技術の進展などにより偽情報の拡散が加速し、認知戦への対応が一層困難になる可能性がある中、単なる情報公開にとどまらない戦略的な発信を重視している。

防衛省が目指すのは、平素から日本の安全保障にとって望ましい情報環境を構築し、それを有事における戦略的資産として機能させることだ。また、日本の活動の評価を損なうような発言に対する社会のレジリエンスを高め、国際社会の支持を得るため、同盟国や同志国とも連携する方針だ。

また防衛政策などの取組の必要性や正当性については、国内外に向けて能動的かつ重層的に発信していくとしている。偽情報の拡散に対しては、スピード感をもって対応し、関係省庁とも連携しながら、認知戦に係る発信体制を強化する。

その他、防衛省は発信を効果的に行うため「情報収集・分析」「発信」「評価・改善」からなる「認知戦対応サイクル」の確立を目指している。SNSなどの膨大な公開情報を広く効率的に収集し、最新技術を適時適切に取り込みつつ、民間をはじめとする外部機関の力も積極的に活用して情報収集や分析を行うことで、的確な発信につなげるとしている。

体制面の強化も進める。情報戦業務を担う部署を新たに設置するため、令和6年度から情報本部の体制整備を進め、令和7年度からは各自衛隊の体制整備を予定している。さらに、部隊レベルでの情報戦能力を強化するため、情報戦を担う部隊の新規編成も計画している。

防衛省の資料からは、現代の安全保障において情報が極めて重要な役割を持つとの認識がうかがえる。偽情報に翻弄されることなく、日本の正当性や防衛の意思を国内外に正確に伝え、社会のレジリエンスを高める戦略的コミュニケーションの実践が課題となっている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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