アメリカに亡命している中国人実業家の郭文貴について、ニューヨークの連邦地方裁判所は6月29日、大規模な投資詐欺事件に関与したとして、懲役30年の判決を言い渡した。あわせて、不正に得た約8億8,900万ドル(約1,400億円)の追徴を命じた。
判決によると、郭文貴は中国の民主化を支持する人々の信頼を利用し、投資名目で資金を集めていたとされる。その結果、世界中で1000人以上が被害を受け、数億ドル規模の損失が生じたと認定された。
AP通信によると、判決はマンハッタン連邦地裁のアナリサ・トーレス判事が言い渡した。判事は、郭文貴が集めた資金を豪邸やヨット、スポーツカー、高級ブランド品、高級家具などに充てていたと指摘した。
法廷では、複数の被害者による書簡が読み上げられた。書簡では、生涯の貯蓄を失い、家庭生活が破綻したことや、長期にわたり精神的な苦痛を受けていることなどが訴えられた。判事はまた、郭文貴が責任を認めず、被害は生じていないと主張し続けていたと指摘した。さらに、支持者に対して批判者への嫌がらせや脅迫を呼びかけたことがあったとも述べた。
裁判所は、被害者への賠償の基礎として、約8億8,900万ドルの追徴を命じた。
被害規模と証言内容
検察によると、郭文貴は2018年から2023年にかけて、自身が関係する複数の組織を通じて投資案件を持ちかけ、総額10億ドル(約1,600億円)を超える資金を集めたとされる。対象には、GTVメディア・グループや「ヒマラヤ・ファーム・アライアンス」、「ヒマラヤ取引所」などが含まれる。
2025年、7週間の審理を経て、陪審団は12件の起訴のうち9件について有罪と認定した。内容は、電信詐欺や証券詐欺、マネーロンダリングなどである。検察は量刑に関する意見書で、この事件により多数の家庭が影響を受けたとしたうえで、懲役30年の判決を求めていた。
被害者の陳薇氏(Chen Wei)は法廷で、「郭文貴の行為により家族の生活が大きく損なわれた」と述べた。
判決に先立ち、郭文貴は収監中の健康状態について言及し、当日未明に体調不良で病院に搬送されたと説明した。また、審理を引き延ばす目的で仮病を装っているとする検察側の主張を否定した。通訳を通じて、法廷到着時にも腹痛や吐き気があり、嘔吐したと述べた。
一方で、事件の内容については、「中国共産党を打倒するために米国に来た」と述べるにとどまり、詐欺の指摘には直接言及しなかった。
郭文貴とは何者か
弁護側は、郭文貴が中国共産党当局から長年にわたり弾圧や迫害を受けてきたと主張し、中国政府による越境的な反体制派への取り締まりの影響を受けたと訴えた。また、拷問により後遺症を負ったとも説明した。さらに、今回の判決が中国政府に利用され、海外の反体制派への圧力が強まる可能性があると指摘した。
公的記録によると、郭文貴はかつて中国で実業家として活動し、約10年前に中国を離れた。その後、香港やロンドンを経て、2017年にニューヨークに定住した。以降、中国共産党や幹部の不正を批判する活動を行っている。
また、アメリカの政治活動家スティーブ・バノン氏と協力関係にあり、2020年には中国共産党政権の打倒を掲げる取り組みを発表している。
一方、中国当局は郭文貴に対し、強姦や誘拐、贈賄などの疑いがあるとしているが、郭文貴はこれらを否認し、政治的な動機によるものだと主張している。
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