中国 「義理で見て」が道徳的圧力と批判

映画PRで大炎上 中国人気歌手が謝罪

2026/07/01 更新: 2026/07/01

「顔を立てるつもりで映画を見てほしい」

中国の人気歌手・韓紅(ハン・ホン)のこの一言が、大炎上を招いた。長年、慈善活動で高い信頼を集めてきた彼女は批判を受け、自ら謝罪する事態となった。

発端は、映画『抓特務(スパイを捕まえろ)』のプレミアイベントだった。韓紅は観客に「顔を立てるつもりで映画を見てほしい」と呼びかけた。

韓紅は長年、災害支援や慈善活動に力を入れ、「善意の象徴」として知られている。そのため、この呼びかけが、善意や信頼を商業映画の宣伝に利用したように受け止められた。

SNSでは「道徳的圧力だ」と批判が広がった。韓紅が設立した慈善団体には多くの市民が毎月寄付を続けているが、今回の炎上を受け、定期寄付を解約したことを報告する投稿も相次いだ。

一見すると何気ない応援の一言。しかし、中国では慈善活動で築いた信頼があったからこそ、「義理で見て」という呼びかけは単なる宣伝では済まなかった。

韓紅は6月30日、「軽率な発言だった」と謝罪し、「今後はより慎重に行動する」と表明した。

一方、炎上の背景には映画そのものへの反発もある。

作品『抓特務(スパイを捕まえろ)』は、中国共産党(中共)の公安が潜伏スパイを追う物語だ。日本で一般的に「スパイ映画」と聞いて思い浮かべる「スパイ」と中国人が受ける印象は大きく異なる。

中共はこれまで、「特務(スパイ)」「反革命」などのレッテルを貼り、多くの市民を弾圧してきた。証拠がなくても「スパイ」と決めつけられれば、本人だけでなく家族まで監視や差別の対象となり、親子や夫婦、友人同士が互いを疑い合う時代が続いた。

さらに近年も、中国政府は「国家安全」を掲げ、「スパイを見つけたら通報を」と国民に呼びかけるキャンペーンを続けている。

そのため、多くの中国人にとって「スパイを捕まえろ」という言葉は、娯楽映画のタイトルというより、過去の政治運動や現在の監視社会を思い起こさせるものである。

こうした作品を、「慈善活動家」として信頼を集めてきた韓紅が「義理で見てほしい」と呼びかけたことで、映画への反発と本人への失望が重なり、今回の大炎上につながったとみられる。

 



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李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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