中国 野生動物が犠牲 6億円の工事にも疑問

世界遺産に「刑務所のような有刺鉄線」=中国・泰山

2026/07/06 更新: 2026/07/06

「世界遺産に、まるで刑務所のような有刺鉄線が必要だったのか」

中国・山東省の世界遺産・泰山を囲む全長約135キロの有刺鉄線が、中国国内で大きな批判を浴び、管理当局は撤去を決めた。

泰山は、古くから中国人にとって特別な山だ。歴代皇帝が天に祈る儀式を行った場所として知られ、「泰山北斗」という言葉は、その分野で最も尊敬される人物を指すほどである。また、「泰山より重い」という表現は、命や責任の重さを語る時にも使われてきた。

そんな名山が、有刺鉄線で囲まれた。しかも、その距離は約135キロに及ぶ。

地元住民や登山愛好家によると、有刺鉄線には野ウサギやアナグマ、キツネ、野鳥などが絡まり、命を落とすケースが相次いでいたという。現場では、近づくと腐敗臭が漂う場所もあったと話している。

当局は当初、「森林火災の防止」「害虫対策」「無断入山の防止」のために設置したと説明した。

しかし、中国メディアが現場で検証したところ、鋭い刃はペットボトルを簡単に切り裂く一方、火の粉や飛来する害虫を防ぐ効果はほとんど期待できないと指摘。「本当に防火対策なのか」と疑問の声が相次いだ。

SNSでは、「自然を守るどころか、動物を傷つけている」「火事になったら消防隊はどう通るのか」「景観まで壊してしまった」など批判が噴出。

関連話題は中国SNSでトレンド入りし、世論の高まりを受け、現地の管理委員会は7月2日、「7月10日までにすべて撤去する」と発表した。

一方で、中国メディアは、この事業には約6億円が投じられたにもかかわらず、環境への影響評価や景観への配慮、住民への説明が十分だったのか疑問視している。さらに、記者が問い合わせても担当部署がはっきりせず、行政機関同士で責任を押し付け合う場面もあったという。

中国で「重さ」の象徴とされてきた泰山。その山に張り巡らされた有刺鉄線は、撤去されてもなお、公共事業の軽さを問い続けている。

 

世界遺産・泰山のに設置されていた有刺鉄線(スクリーンショット)
李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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