中国はいかに日本の株式市場へ侵入し 企業の技術と産業機密に接近したのか

2026/07/16 更新: 2026/07/16

中国の目的は、日本の技術と産業機密を獲得し、世界の経済超大国になることである

論評

2007~2008年の金融危機後、立ち直りつつあった米国が消費者保護を目的とする2010年のドッド・フランク法を成立させた頃、中華人民共和国はすでに、世界最大の経済超大国になるという目標を加速させるための大規模な取り組みを始動させていた。

第一段階は、当時世界第2位の経済大国であった日本を追い抜くことであり、中国は2010年に国内総生産(GDP)で日本を上回り、これを実現した。では、第二段階は何だったのか。日本を代表する上場企業である産業・金融大手の企業群に浸透することであった。

標的となったのは、日本産業界を代表する有力企業であった。2010年当時、日本には約2292社の上場企業が存在していた。中国共産党(中共)は、このうち約7.5%に当たる約170社の株式を取得した。これは、日本の産業・企業の防御を突き破る先兵であった。中国の「トロイの木馬」である。

これらはいずれも世界規模で事業を展開し、米国市場に深く根を下ろしている企業であった。エネルギー企業、世界的なITサービス企業、サイバーセキュリティー企業、通信企業、医薬品メーカー、多角的金融サービス企業などが含まれていた。

中国は、警戒を招かないよう慎重に行動した。5%を超える株式の取得は規制当局の審査を招くため、中国は目立たないようにする必要があった。

中共は、「SSBT OD05オムニバス・トリーティー・クライアント(SSBT OD05 Omnibus–Treaty Client)」と呼ばれる金融手段を利用した。これは、オーストラリアのステート・ストリート銀行信託会社の下で、シドニーに登録されたファンドである。

興味深いことに、いわゆるオムニバス・ファンドとは、複数の基礎資産を一つにまとめた資金を指す。これらの資産をまとめることで、最終的な投資家や資産の実質的所有者が誰であるのかが不明確になる。

この場合の「トリーティー」とは、大規模投資をオーストラリア経由で行う戦略を指す。これにより中国は、非居住者の投資家が日本への投資に伴う源泉徴収税を軽減できる日豪租税条約を利用することが可能となった。

中国による投資は相当な規模であった。例えば、2012年に日本へ投入された投資資金は約450億ドルに上った。現在のドル価値に換算すれば、650億ドルに相当する。

中国投資有限責任公司(CIC)はSSBTファンドへの投資家であるとみられており、国家外貨管理局(SAFE)も同様である。これらの政府系ファンドは強力な金融機関である。

中国投資有限責任公司と国家外貨管理局はいずれも、中国の軍事・情報機関と直接的な関係を持ち、中共の指揮下で活動している。両機関は、中共の戦略的利益と財政上の目標に奉仕している。

米国の情報機関関係者の多くは、これらのファンドが人民解放軍や情報機関である国家安全部、さらには中国政府のその他の機関と関係していると考えている。

これが事実であれば、企業統治を巡って取締役会が懸念を抱くべき事態であった。外国の軍事・情報機関が日本の上場企業で金融上の持ち分を保有することは、日本の国家安全保障関連法に違反することになる。しかし、中国は問題が表面化する前に先手を打っていた。

現在、中国投資有限責任公司と国家外貨管理局の資産価値の合計は約5兆ドルであり、ロシアとブラジルの名目GDPを合わせた額にほぼ等しい。この巨額の資金力を背景に、中国は日本にとって強力な経済協力相手であると同時に、警戒すべき経済・戦略上の対抗相手ともなっている。

早くも2003年には、中川昭一経済産業相が、日本に対する中国の意図に懸念を抱いていた。中国政府に対する強硬派として積極的に発言していた中川氏は、経済的利益よりも国家安全保障と主権を重視した。

中国の戦略は見事であったし、その実行も周到であった。目的は、世界で最も強力な経済大国となるため、念願のGDP世界第1位への道を開くべく、日本の魅力的な技術と産業機密を獲得することであった。

これは、中国対米国の競争であり、日本がそれと知らずに中国を支援する構図となった。2000年代初頭から、日本はヘッドライトを浴びて立ちすくむ鹿のように、何が起きているのかを理解する前に衝撃を受けた。

中国のいわゆる「長期戦略」は、「戦略的忍耐」とも呼ぶことができる。これは、市場での立場を強化する資産を取得する「地位の蓄積」に重点を置く、地政学的・経済的な原則である。

中国が日本で行っていたのは、まさにそれであった。日本の産業技術の粋に接近するための経路を慎重に築いていたのである。過去の衝突の歴史は忘れ、日本の内部に入り込み、長期にわたって利益を引き出そうとした。

中国の戦略の一つは、日本の圧倒的な産業力へ浸透することであった。世界一流の経済大国を築くには、産業力の発展曲線で先行し続けるため、最高の技術が必要となる。中国は、どこへ向かうべきかを正確に把握していた。日本が持つ最良のものを標的とすることが目標であった。

中共は、第二次世界大戦後の日本の工業化を目の当たりにし、日本が敗戦からいかに迅速かつ決定的に立ち直り、数十年のうちに超大国へと台頭したかを見ていた。

中共の関心を引いたのは、日本の成功だけではなく、世界大戦に敗北した国が直面する数多くの障害を、どのように乗り越えたかという点であった。それでも日本は障害を克服した。

戦後の産業大国となるうえで、極めて重要な要素の一つが技術革新であった。革新を生み出す能力こそ中国に欠けていたものであり、この革新能力の欠如は、中国が世界的な有力国へ台頭することを間違いなく妨げるものであった。

実際、技術革新は中国の「アキレス腱」であり、現在もそうである可能性がある。李克強首相は2019年の中共の年次会議で、出席者を驚かせる次のような発言をした。

「われわれのイノベーション能力は強くなく、重要分野の中核技術における弱点は、依然として際立った問題である」

この時点で、中国はすでに日本の内部に入り、海外直接投資と株式市場への浸透という手法を駆使していた。

「重要分野」とは、中国が米国に対して持続可能な経済力を発揮する過程で必要とする20の重要技術を示した、中共の青写真「863計画」を指す。

中国は何が必要かを理解していた。しかし、国内には不足があり、それは知的財産の取得と、20世紀型の帝国を構築する過程を通じてのみ解決できるものであった。中国は日本の奥深くに入り込まなければならなかった。

中国が自ら革新できないものを取得しなければならないという首相の認識は、前例がないと同時に、実情を明らかにするものであった。

簡単に言えば、中国は必要とする技術を完全に発展させるため、別の手段を用いなければならないという意味である。1986年3月に発表された863計画は米国のGDPを追い越すために必要な技術を示す青写真であった。

取得手段の一覧は長いが、中国が世界の主要国として競争するためには必要なものであった。技術革新の不足を補うため、中国は次のような幅広い活動に従事する必要があった。

・合併・買収
・対象を絞った株式投資
・国際合弁事業
・海外直接投資
・能動的なサイバー諜報活動
・受動的なサイバー諜報活動
・人的資本を利用した諜報活動
・社会経済的な搾取
・外交交流
・学術研究

中国によるこれら上場企業への投資は、中国に利益をもたらした一方、日本には犠牲を強いた。現在、日本のGDPは米国、中国、ドイツに次ぐ世界第4位である。

2010年、日本企業で働く中国人は約40万8000人であった。日本政府は、2030年までにその数が約150万人に増えると推計している。

現在、中国人は日本各地の企業に入り込んでおり、比較的低い職位から、専門的な技術職や管理職に至るまで、さまざまな役割を担っている。

その影響は大きい。2017年に施行された中国の国家情報法と、2023年に改正された反スパイ法の下では、海外にいる中国共産党員は、国家が主導する情報活動への参加を求められた場合、これに応じる義務を負う。

これは、雇用主が保有する専有情報を盗み、中国へ送ることを意味する。これを表す言葉は「スパイ活動」である。

中国は、日本の出生数減少により、日本が将来的に労働力不足に直面することを把握していた。また、日本の産業基盤を構成する企業が、863計画と合致する新技術の秘密を保有していることも理解していた。

さらに、日本の金融大手が、世界における日本の影響力拡大を後押しすることも理解していた。

もちろん現在、世界は、中国が企業・産業スパイ活動や、世界各地の企業買収に貪欲に取り組んでいることを認識している。

しかし、日本は、いわゆる「板挟み」の状態に陥っていた。出生率の低下は、やがて経済基盤を機能不全に陥らせる恐れがあった。中国はその状況を利用したにすぎない。将来的に予想された労働力の空白を埋めたのである。

日本は、外国による取得から自国の貴重な資産を守るため、さらに多くの対策を講じなければならないことを、困難な経験を通じて学んだ。

日本は、戦後の台頭を特徴づける一助となった技術と市場が失われることを防ぐため、法律の強化を進めている。

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