中国のAI圏拡大「債務のわな」超すリスク 米研究所が警告

2026/08/03 更新: 2026/08/03

中国共産党(中共)が人工知能(AI)を通じて自国の技術基盤や規格を海外に広げる動きについて、米シンクタンクのハドソン研究所は、各国を中国の技術体系に依存させる「技術のわな」を生む可能性があると警告した。一帯一路がもたらしたとされる「債務のわな」よりも深刻な結果につながりかねないとの見方である。

ハドソン研究所は7月30日、同研究所アジア太平洋安全保障プログラムのパトリック・M・クローニン所長と頼品珊研究員が執筆した報告書を公表した。報告書は、米中両国の競争が新たな段階に入ったと指摘している。

中共政府は過去10年以上、「一帯一路」構想を通じて道路や港湾、光ファイバー網、デジタルインフラを海外に輸出してきた。現在はさらに、半導体やクラウド基盤、基盤モデル、技術標準、アプリケーション、人材育成、統治制度までを含むAIの生態系全体を海外に広げようとしているという。

報告書によると、中共政府の戦略は、国際標準の策定、国内技術革新の主導、世界市場への展開という三つの柱から成る。中国側は「世界人工知能協力機関(WAICO)」の設立も提唱している。

習近平は7月、上海で開かれた世界人工知能大会で、独自の「中国式解決策」を打ち出した。しかし、報告書は、この構想が中国を中心とした仕組みであることに変わりはないと分析する。中国製のAIモデルが中国のインフラ上で稼働し、中国企業がシステムを構築して中国の技術標準に従うことで、各国のデジタル環境に次第に組み込まれていく構図である。

報告書は、「一帯一路」が債務のわなを生んだとすれば、今回のAI戦略は、さらに深刻な結果を伴う技術のわなを生む可能性があると強調した。

一方、米国の現在の政策は、半導体や重要鉱物の供給網、同盟国との産業生態系、先端AI分野での協力など、供給面の競争力強化に偏っており、包括的なAI外交戦略を欠いていると指摘した。

報告書は、米国がAIを外交政策の中核に据え、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など信頼できる協力国に対し、半導体、計算資源、再生可能エネルギーによる発電、ソフトウェア、法制度支援を一体化したAI体系を提供すべきだと提言した。

具体的には、エヌビディア、OpenAI、マイクロソフト、グーグルなど米国の民間企業に加え、台湾の半導体産業、日本、韓国、オーストラリアの先端製造・クラウド能力を結集する構想である。各国が自国で管理できる「主権AI」を構築し、開放性と柔軟性、多様性を備えた選択肢を示すことで、中国共産党の集権的な体系に対抗するとしている。

データサイエンス企業iKalaの程世嘉会長は台湾の「科技新報」に対し、米国政府と産業界が中国政府のAI戦略を強く警戒しており、過去2年間でその懸念が軍事・国家安全保障上の脅威にまで高まったと指摘した。米中貿易戦争によって両国の分断が進むなか、AIが競争を一段と激化させているとの見方である。

程氏は、AIを中国共産党にとって新たな「一帯一路」と位置づけた。世界のソフトウェア開発者を中国のオープンソースモデル陣営に取り込み、中国の技術的影響力とエコシステムを幅広い分野へ浸透させる戦略だと分析した。

さらに、AIが軍事分野の中心的な技術となれば、米国は強力なAIが対立国に渡ることを認めないと指摘した。トランプ政権がAnthropicの先端モデルに対する輸出規制を命じた背景には、国際秩序の均衡が脅かされることへの警戒もあるとの見方を示した。

米ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長は、中国の新興企業「月之暗面(Moonshot)」が「Kimi K3」を開発する際、米AI企業Anthropicの「Claude Fable 5」を蒸留したことを、米政府が把握していると述べた。

任義
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