米中「宇宙戦」競争激化 米英が衛星共同作戦 中共をけん制

2026/09/03 更新: 2026/09/03

宇宙は現代の軍事作戦で極めて重要な領域となっている。地上での作戦を支援するだけでなく、戦争の行方そのものにも影響を及ぼすためだ。宇宙兵器をめぐっても米中の競争は激しさを増している。

アメリカは、将来起こり得る宇宙空間での米中衝突に備え、衛星関連技術の開発を進める一方、イギリスなどの同盟国と宇宙での軍事作戦を実施し、中国共産党(中共)へのけん制を強めている。

ロイター通信によると、今年6月、米軍の分析担当者が注視していた中国の極秘無人宇宙機が、地上数百キロ上空にある商用・軍事衛星が集中する軌道で小型衛星1基を放出した。

米宇宙追跡企業LeoLabsによると、小型衛星はその後、別の中国衛星の周囲を回り込むように飛行した後、再び無人宇宙機の方向へ戻った。

この衛星の詳細や任務についてはほとんど分かっていない。ただし、米軍も同様の極秘無人宇宙機を運用している。

ロイターが関連文書や宇宙追跡データを分析し、現役・元軍関係者に取材したところ、米中双方の計画から、軍事宇宙作戦が急速に発展している実態が浮かび上がった。両国はともに、宇宙での衝突が現実となる事態に備えている。

衛星はすでに現代戦に欠かせない存在となっている。ウクライナや中東での戦争でも、その重要性が示された。

衛星は数十年にわたり、地上部隊の通信や航法、情報収集を支えてきた。いったん軌道に投入されると、通常は決められた軌道を飛行し続ける。

しかし近年、衛星を攻撃能力を備えた兵器プラットフォームとして捉える国が増えている。電波妨害やレーザー照射などで敵の衛星の運用を妨害するほか、敵の宇宙機を捕獲することも可能とする。

地球周回軌道が混雑するなか、宇宙をめぐる競争も激しさを増している。

イーロン・マスク氏率いるSpaceXは約1万1千基のスターリンク衛星を運用し、さらにAI機能を備えたデータセンターで構成する、より大規模な衛星ネットワークの構築も計画している。

中共もこれに対抗するネットワークの構築を進めている。一方、トランプ大統領のミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」では、宇宙配備型迎撃システムの導入を想定している。

米英が宇宙で共同軍事作戦 中共をけん制

ロイターが特許関連文書や調達公告、学術論文を調べたところ、中共軍と関係のある研究者らが、他国の宇宙機を追跡、さらには捕獲するための衛星など、さまざまな技術を開発していることが分かった。

こうした任務を長時間継続するため、衛星への燃料補給や燃料消費を抑える技術の研究も進めている。

また、民間の宇宙追跡データによると、米英は、中国の偵察衛星とみられる「試験12号衛星01星(Shiyan 12-01)」が通過する軌道付近で、両国初となる宇宙での共同軍事作戦を実施した。

宇宙情報企業Slingshot Aerospaceによると、米英共同作戦は昨年9月に行われた。

米宇宙軍はコロラド州の基地から米軍衛星を操作し、イギリスの衛星へ急速に接近した。この時、中国の「試験12号衛星01星」が、両衛星の約83キロ下を通過していた。

この高度を飛行する衛星同士としては、83キロは比較的近い距離だと専門家は指摘する。

軍事分野の経歴を持つ宇宙専門家3人はロイターに対し、今回の行動は中共へのメッセージだった可能性が高いと語った。

英空軍の元高官で、現在は宇宙分野の顧問を務めるアンドリュー・ターナー氏は、これはほぼ間違いなく「中共に対する戦略的メッセージ」だと指摘した。同盟国の結束と能力を示すとともに、イギリスの衛星への妨害を思いとどまらせる狙いがあるという。

米英両国はこの作戦を公表した。「ファイブ・アイズ」加盟国間で行われた同種の作戦として、確認しているものでは初めてとなる。

ただし、作戦地点の近くに中国の宇宙機が存在していたことは明らかにしていなかった。宇宙分野では情報活動と密接に関わるため、多くの活動が依然として機密扱いとなっている。

米宇宙軍のチャンス・サルツマン宇宙作戦部長は7月、「中共の関連能力は急速に発展している」と述べた。標的を妨害または破壊する地上配備型、宇宙配備型の兵器も含まれており、脅威は大きいとした。

アメリカも、将来の紛争で重要となる能力の強化を進めている。

米宇宙軍司令部はロイターに対し、今回の任務は同盟国と宇宙空間で連携する能力を示したものだと説明した。

イギリス国防省も、軍事作戦における宇宙の重要性は高まっており、イギリスとそのパートナー国は国家と軍事上の利益を守るため、高度な軌道上作戦を実施しているとした。

ただし、米英双方とも、今回の作戦で中国衛星にどの程度接近したかについてはコメントしなかった。

次期米宇宙軍宇宙作戦部長のダグラス・シース氏も、この作戦に関与していた。

シース氏は作戦終了後のインタビューで、宇宙機が別の宇宙機に接近することで、同盟国の衛星が正常に機能しているかを確認したり、相手側が「本来すべきでない行動を取っていないか」を判断したりできると説明した。

当時、付近に他国の衛星が存在していたかについては明らかにしなかった。

シース氏は9月3日、サルツマン氏の後任として宇宙作戦部長に正式就任する。

イギリスは最近、この任務がインド太平洋地域への海軍展開と同時期に実施したことを明らかにした。

当時、英宇宙司令部司令官だったポール・テッドマン氏は今年4月の会議で、「宇宙を活用して地上の軍事作戦を支援するだけでなく、作戦の結果そのものに影響を及ぼすことは非常に、非常に重要だ」と語った。

中共外務省は、米英共同作戦の詳細については把握していないとしたうえで、宇宙の兵器化には反対すると表明した。

中国の「試験12号衛星01星」と無人宇宙機について問われると、中共外交部は関連情報を持っていないと回答した。

衛星を「兵器システム」と位置づけ

米、中、露がいずれも地球周回軌道上で機動できる衛星を運用している。こうした衛星は他の宇宙機に接近し、観測や調査を行うことができる。

こうしたシステムは、レーザーや物体を射出する装置などを搭載する兵器へ転用することもできる。

欧米の当局者は、中共とロシアがアメリカや同盟国の衛星を脅かすために利用できる技術をすでに実証していると指摘する。

テッドマン氏は昨年秋のインタビューで、各国軍は現在、衛星を機動させ戦闘に用いる「兵器システム」として捉えていると述べた。

また、西側諸国は「宇宙分野における戦略的優位を維持するため懸命に取り組んでいる」と語った。

米宇宙軍によると、アメリカの無人宇宙機では現在、さまざまな試験や実験を行っている。

米宇宙軍司令部のスティーブン・ホワイティング司令官は、現代戦における宇宙の重要性を繰り返し強調してきた。

ホワイティング氏は、対立国はアメリカによる重要システムの利用を阻止し、米軍の戦力を低下させるためのさまざまな手段を開発していると警告する。

また、有事には紛争の初期段階からアメリカの宇宙資産を攻撃してくるとの見方を示した。

こうした脅威に対抗するには、アメリカは宇宙でより積極的な戦闘態勢を取る必要があるとホワイティング氏は主張する。

アメリカのシステムを守るだけでなく、必要に応じて敵側の宇宙資産をけん制し、攻撃できる態勢を整えるという意味だ。

ホワイティング氏は、軌道上迎撃システムをはじめとする宇宙兵器の開発を呼びかけている。

同氏は4月の会議で「われわれは宇宙での衝突に十分備えなければならない。抑止に失敗すれば、われわれは戦い、勝利する」と述べた。

一方、一部の専門家は、宇宙機を使って軌道上で攻撃するよりも、地上から衛星を妨害する方が依然として容易だと指摘する。

米宇宙軍は6月、自らが保有するこうした能力について異例の公表を行った。

L3ハリス・テクノロジーズが開発した地上配備型の電磁兵器を導入したと発表した。この兵器は、敵の衛星を使用不能にしたり、運用を妨害したりすることを目的としている。

トランプ氏 宇宙競争を重視

アメリカは依然として世界をリードする宇宙大国だが、中共も宇宙分野で急速に能力を拡大している。

中国は運用する衛星の数を増やすだけでなく、より複雑な任務にも取り組んでいる。

中国の衛星は、米当局者が軌道上の「ドッグファイト」と呼ぶ動きをすでに見せている。複数の衛星が近距離で連動して移動する動きなどを指す。

中国の宇宙機は、機能を失った衛星を捕獲し、別の軌道へ移動させる能力も示している。中国の研究機関も新たな技術の研究を続けている。

特許関連文書によると、中共軍と密接な関係を持つ中国の大学では、研究者らが他の衛星を追跡する衛星の開発を進めている。この中には、複数の宇宙機が網を使って標的を捕獲する構想も含まれている。

トランプ大統領は宇宙競争を重視してきた。

第1次政権では米宇宙軍を創設した。また先月には「アメリカ宇宙アカデミー」の設立準備を進める大統領令に署名した。

「アメリカ宇宙アカデミー」は、NASAが主導し、陸軍士官学校ウェストポイントなどの名門軍学校をモデルに設立する連邦教育機関で、専門技術と指導力を兼ね備えた次世代の宇宙人材を育成することを目的としている。

トランプ氏は当時、アメリカは宇宙分野で主導的な地位を維持しなければならないと強調した。

「宇宙で2位になれば、地球上で1位の国家ではいられない。そんなことは絶対に起こさせない」と述べた。

張婷
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