ロシアのペスト研究員死亡 母親が「試験管破損」を否定

2026/10/09 更新: 2026/10/09

ロシアの女性研究員がペストに感染して死亡した疑いをめぐり、母親が当局の説明を否定したことで、死亡の経緯をめぐる疑問がさらに深まっている。

ロシア・イルクーツクの抗ペスト研究所に勤務していたダリア・シピロワさん(28)は、研究中にペスト菌の入った試験管を誤って破損し、その後感染した。10月2日に治療のかいなく死亡したと伝えられていた。

しかし、シピロワさんの母親は「試験管を割った」とする説明を強く否定している。

英紙「テレグラフ」によると、母親はロシアの地元メディアに対し、当局の説明をまったく信じていないと明言した。こうした試験管が簡単に割れることはなく、自分は「真相を知っている」と語ったという。

母親自身も医療従事者である。母親は、高度な安全管理を行う研究施設で使用する容器は非常に頑丈で、多くの医療関係者でさえ、その構造を十分理解していないと説明した。壁にたたきつけても割れず、簡単に破損したり、中身が漏れたりするものではないと強調している。さらにロシア当局に対し、「彼らは娘が死んでいくのを、ただ見ていた」と怒りをあらわにした。

では、生物安全実験室の基準から見て、こうした試験管は本当に簡単には割れないのだろうか。答えはイエスだ。

BSL3やBSL4と呼ばれる高度な生物安全実験室では、ペスト菌のような危険性の高い病原体を入れる容器に、高密度のポリマー素材が使われることが多い。液体を満たした状態で数メートルの高さからコンクリート床に落としたり、壁に強くぶつけたりしても、せいぜい変形するか跳ね返る程度で、普通のガラス容器のように簡単に破損しない。

仮にガラス製のアンプルを使用する場合でも、研究施設では厳格な二重封じ込めが求められる。外側を頑丈な保護容器で覆い、内部の容器が破損した場合でも、病原体やエアロゾルが外部に漏れないようにする仕組みだ。

シピロワさんの死亡をめぐり、現地住民の間ではペスト感染への不安が広がっている。一方、ロシア当局は詳しい経緯を明らかにしておらず、シピロワさんの死因について「原因不明の肺炎」と説明している。こうした対応が、国際社会の疑念を強めている。

一部の専門家からは、シピロワさんが接触したペスト菌が遺伝子改変された菌株で、生物兵器研究に使われていたのではないかとの疑いも出ている。

米疾病対策センター(CDC)の元所長、ロバート・レッドフィールド氏は、通常の実験室内での感染事故であれば、標準的な対応として速やかに抗菌薬を投与することで救命できたはずだとの見方を示した。それにもかかわらず死亡したことについて、レッドフィールド氏は、シピロワさんが接触したペスト菌が人工的に改変され、通常の抗菌薬に耐性を持っていた可能性があるとみている。

WHOや米国は現在、ロシア側にさらなる情報開示を求めており、シピロワさんが死亡した経緯を明らかにし、事件について透明性を確保するよう求めている。

 

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