【大紀元日本10月6日】酔翁の意は酒に在らず。真意は別の所にあるという意味を表すこの有名な中国のことわざは、外交手腕が磨かれ過ぎているためか、それとも内部闘争が激して内情が混沌となったせいか、真意が伝わらなくなった最近の中国の外交に当てはまるかもしれない。
例えば、南シナ海で強硬な動きに出ている北京当局。南シナ海問題を中国の核心的な国益とする発言は、従来は中共軍部と米国軍部の間の話題に留まり、米政府との会談で中国政府側が言及したことは一度もなかった。しかし今年3月初め、スタインバーグ米国務副長官とベーダー国家安保会議アジア上級部長が中国を訪れた時、中国の政府高層は二人に、台湾、チベットのほかに、南シナ海を自国の主権、領土保全と関連した「核心的利害」地域とみなしていると持ち出した。中国政府の南シナ海における立場を初めて米国に公式に通告したこの発言は、国際社会で一連の反発を招き、米国をはじめ、ほかの国々に警戒心を与えてしまい、中国脅威への警戒が高まるきっかけとなった。このため、米国は、南シナ海問題は国際問題であり、ASEANの間で協議すべきというスタンスを今年7月に強く訴えるようになった。
南シナ海問題を国際化することは北京政権にとって最も望ましくない事態である。この結果をなぜ北京当局は自ら招いてしまったのか。実際、「南中国海(南シナ海の中国名称)」問題は「中南海(中共中央高層の所在地)」問題であり、つまり内部闘争が反映されている。裏には中国軍部の一部権力者が中南海のトップに難題を持ちかけている事情がある、と中国問題に詳しい在米学者の石蔵山氏が指摘している。米国に向かうよりは、「中南海高層に焦点を当てる」ことが狙いと同氏は考えている。
尖閣諸島沖で起きた漁船衝突も同じく、北京政権は領有権を強気で主張しているが、その真意は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)」に対する領有権ではなく、「釣魚台(中国国家リーダーが外国要人を招待する場所)」が象徴する政治権力を維持させることにある、と在米中国人ジャーナリスト曹長青氏が最近の評論文で指摘する。
曹氏は評論文を通して、「憤青」(愛国感情に燃える青年)に次のようなメッセージを送っている。
「共産党の権力者らは、毛沢東から、_deng_小平、江沢民、胡錦涛まで、すべて釣魚島(尖閣諸島)を放棄してきた。熱血の愛国者たちよ、本当に国を愛するなら、船を出して釣魚島に向かうより、車で北京の釣魚台に向かうべきだ。中共当局は、早くから釣魚島を放棄してきた。君たちはまず自国の政府と交渉すべきだ。
1972年の日中外交設立の際の連合声明と1978年の中日友好条約。毛沢東と_deng_小平時代に日本と調印したこの二つの文書は、いずれも日中間の領土争議に言及しておらず、釣魚島の言葉も全く出ていない。その後、江沢民や胡錦涛も日本を正式に訪問し、公の場の講演で一度も領土の争議に言及したことはなかった。北京の釣魚台国賓館で日本の要人を招待する際にも一言も触れなかった。毛沢東と_deng_小平が日本と共に発表した声明と締結した条約は、いずれも米国が釣魚島を日本の管轄下にした後のことなのに、釣魚島の領有権について全く触れていないということは、主権が日本にあることを事実上黙認したのと同じではないか。
誰も憤青たちに言わないことだが、中南海の主たちは、釣魚島には関心がない。彼らの唯一の関心は、釣魚台だ。この釣魚台国賓館で思うままに外国人と条約を結ぶことのできる権力だ。960万平方キロの土地で絶対的な独裁の地位を永遠に占めることこそが、彼らが本当に守りたいことだ。自分の“ウサギ小屋”さえも守れない憤青たちよ、釣魚島を守ろうしている君たち、君たちが実際守っているのは共産党帝国だ」
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