全ての食糧の原点である「種子」を制したものが世界の食糧を制する。今、この「種子」をめぐり全世界で「種子戦争」が起きている。4月27日の台湾公共テレビ番組「公視主題之夜」で放送されたドキュメンタリー映画「種子戦争」では、アグリ企業の出現により人類と種子との関わりが大転換したことを掘り下げている。
多国籍アグリビジネス企業の販売戦略
人類は1万2000年もの間、自由に種をまき、実った作物から種を取り、自由に種を交換するという自給スタイルで農業を営んできた。
それが種苗会社の出現で状況が徐々に変わってきた。特に多国籍アグリビジネス企業は、バイオ先端技術を駆使し新品種の開発に力を注ぎ、単位面積あたりの収穫量が高く、色や形、味が均一で、収穫時期にばらつきの無いF1ハイブリッド種子を販売するようになった。その結果、種子は特許に保護される商品となり、大企業の管理下に置かれるようになった。こうしたF1品種の作物は大規模農家が単一品種を大量に生産するには好都合だが、その一方でF1品種から採種した種を蒔いても次に同じ特徴の作物は作れない。そのため農民の自家採取は不可能となり、毎年企業から種子を購入し続けなければならない。こうして世界の農業は、実質上アグリビジネス企業に支配されることになった。
農業の「ノアの方舟」とも呼ばれている「世界種子バンク」
北極圏から1000km離れた島の上に、「世界種子バンク」がある。将来起きるかもしれない植物の絶滅に備えて、地球上で栽培出来る全ての種子がここに保存されている。この種子バンクは、通称農業の「ノアの方舟」とも呼ばれている。2015年9月、シリア内戦により、同地域で種子栽培ができなくなったため、初の「種子引き出し」が請求された。
しかし、種子使用の自由化を主張する活動家は、「世界種子バンク」は多国籍企業が特許を利用して「種子ビジネス」を独占するための手段だと指摘している。
種子使用の自由化を求める活動家の主張
EUの法律によると、EU加盟国内で販売される種子は、種子産業を保護するため、EUの販売許可目録に登録されている品種でなければならない。
これに対して、種子使用自由化運動のインド人環境活動家ヴァンダナ・シヴァ博士は「種子は全人類の共有資産である。地球上の72%の食糧は小規模農場によって栽培されているため、この様な種子法律は72%の食糧を滅ぼしかねない。」とEUを批判している。
(訳注)
*「公視主題之夜」は、2011年11月25日から放送されている90分の公共番組で、専門家の解説を交えて世界中の優れたドキュメンタリー映画を専門に放映している。
(翻訳編集:山本アキ/桜井信一)
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