AIへの巨額投資を背景に、株式市場のバブル化を懸念する声が強まっている。世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオ氏は「富の現金化」という考え方を示し、米中間選挙後が重要な節目になるとの見方を示した。
ダリオ氏はこのほどブルームバーグのインタビューで、金融の仕組みと流動性の観点から現在の市場を分析した。AI投資にはすでにバブルの兆候が表れていると指摘し、「富」と「貨幣」の違いを強調した。
ダリオ氏は例として、あるAIスタートアップ企業が5千万ドルの資金しか調達していないにもかかわらず、次の資金調達ラウンドで投資家から10億ドルの評価額を付けられた場合を挙げた。この時点で、帳簿上では9億5千万ドルの「富」が新たに生まれたことになる。
この「富」は、創業者の保有株式の時価評価に反映され、企業のバランスシートにも計上される。さらに、プライベートバンクから融資を受ける際の担保にもなり得る。しかし問題は、それがあくまで評価上の「富」にすぎないという点だ。
創業者がヨットを購入したり、企業が従業員の給与や税金を支払ったりするには、保有する株式を売却し、買い手を見つけなければならない。その時になって初めて、評価上の「富」は、決済や支払いに使える「貨幣」へと変わる。
ダリオ氏は「バブルの崩壊の本質は、富が強制的に貨幣へ還元される過程だ」と述べた。
同氏によると、市場が過熱する局面では、社会全体の評価上の「富」は指数関数的に増える。一方で、基礎貨幣や流動性の高い現金の増加は、それに大きく遅れる。
投資家の間で暗黙の了解が保たれ、誰も売却して実際の価値を確かめようとしない限り、この仕組みは続く。しかし、何らかの外部ショックによって、多くの保有者が支払いに充てるため、評価上の「富」を現金化せざるを得なくなれば、システムの脆弱性は一気に表面化する。
ダリオ氏は、AIバブル崩壊の重要な時期として、米中間選挙後から次期大統領の就任前までの期間を挙げた。
その理由について同氏は、「富裕税」や「未実現キャピタルゲイン課税」をめぐる提案が議会で再び浮上すれば、重い税負担を避けるため、集中して株式を保有する富裕層がハイテク株を売却して現金化せざるを得なくなる可能性があると説明した。
こうした非自発的な売却は、大量の評価上の「富」を一気に市場へ押し出し、現金化を迫ることになる。その結果、システム全体の流動性不足を引き起こす導火線になり得るという。
データによると、2025年末時点で米株市場の集中度は過去50年で最高水準に達している。S&P500指数では、時価総額上位10社だけで全体の約40%を占めている。
2022年末にAIブームが始まって以降、AI関連銘柄はS&P500指数のリターンの約4分の3、利益成長の約8割、資本的支出増加の9割以上をけん引してきた。
ゴールドマン・サックスの報告書は、現在AI関連の市場価値が約19兆ドルに上る一方、AIが実際にもたらす経済効果との隔たりは極めて大きいと指摘している。
英資産運用会社マン・グループの研究も、AIバブルは現実に存在し、急速に拡大していると指摘した。鉄道、電力、インターネットのバブルと同様、技術そのものは長く残る。しかし、市場の期待が産業の実際の供給能力を上回れば、資金調達の流れは途切れやすいという。そのため、AIバブルが崩壊するかどうかは、もはや時間の問題だとしている。
中国の著名エコノミスト、付鵬氏は2026年の鳳凰湾区財経論壇・金融サミットで、今後18か月が重要な観察期間になると述べた。
付氏は、AIが実際に各産業へ浸透し、生産力へ転化され、産業構造を根本的に変え、経済全体の成長を促すことができれば、富の分配をめぐる世界的な対立は大きく緩和されると指摘した。
一方で、AIが実体経済を押し上げられなければ、世界が直面するのは単なる金融危機にとどまらない。国際秩序そのものへの、より深刻な打撃になるとの見方を示した。
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