法輪功迫害 迫害と修練

法輪功とは何か 受賞歴ある元テレビディレクターの半生から(2)

2016/05/21 更新: 2016/05/21

この記事は、法輪功とは何か 受賞歴ある元テレビディレクターの半生から(1)のつづきです。


 職場で法輪功をやめるよう迫られる

李軍さんは公安局留置所から解放された後、務めていた南京市テレビ局に戻ったが、もとの仕事ではなく総務の部署に異動した。中国共産党は法輪功に対して徹底した迫害政策をとっており、会社側も李軍さんに法輪功の修煉をやめるよう説得した。

一方で、修煉をやめるよう迫ったテレビ局側も、中国共産党の法輪功に対する宣伝はネガティブキャンペーンだとわかっていた。しかし、1989年の六四天安門事件にみられるように、丸腰の民衆に軍事力を投じて鎮圧するような凶悪さをもつ共産党に歯向かうものは少なかった。「長いものには巻かれろ」「平穏な暮らしを大切に」などと李軍さんに考えをかえるよう求めた。

李軍さんによると、当時、中国共産党が宣伝していた人物リスト『法輪功の修煉で死亡もしくは精神病になった例1400』について、南京市住在の学習者が1人いたという。しかし、「周囲はその人が法輪功の学習者ではないことは知っていた」「テレビ局は真実をわかっていながら、共産党の迫害政策を受け入れた」と述べた。

 真夜中の拉致

2001年、夏の暑さも和らいできた9月9日の夜のことだった。李軍さん夫婦が就寝の準備をしていると、「ドンドン」と門を叩く音がした。扉を開けると公安の制服を着た5人の男性が無理に入ってきた。捜査令状も提示せずに家宅捜索を強行し、パソコンや法輪功の書籍を押収して、李軍さんに手錠をかけ連行した。

騒がしさで2歳の息子・陽陽は目が覚めた。目の前で父親が捕らわれるのを目にした。「悪い人」を取り締まる警官は、父親を連れて行った。

その日から陽陽の口数が減った。ある日、陽陽は「お母さん、僕は警官を見たくない。僕、恐い」とつぶやいた。息子にどう話せばいいのか、王晶さんは胸をえぐられるような思いだった。

幼稚園の先生がある日、陽陽の様子が最近変だと母親の王晶さんにたずねた。王晶さんは、父親が連行されていくのを見たと話すと、先生は同情して、陽陽の保育に配慮してくれたという。

「当時、陽陽はまだ幼く、心のダメージは大きかった。陽陽は幸い優しい先生に恵まれ、幸いだった。孤児になった法輪功学習者の子供もいる」。

中国共産党の法輪功への迫害により、学習者だった両親や祖父母など保護者が強制連行されたため、多くの子供が孤児になった。

 

 拷問、離婚の強要 心身を迫害

修煉を放棄するよう、共産党から「強制労働改造」を言い渡された法輪功学習者は、労働教養所で最も厳しく暴力的な拷問を受ける。李軍さんは睡眠の剥奪、長時間立ちっぱなし、恐喝、独房、電気ショック棒を当てられるなど、心身ともに虐待を受けた。

学習者の中にはこのような虐待により命を失うものも少なくない。法輪功迫害情報サイト「明慧ネット」の統計によると、迫害で死亡した人の数は、身元確認できるだけで約3961人に及ぶ。迫害政策は中国全土で実施され、連行や拉致による行方不明者も多数いるが、中国政府は公表していないため、明確な数字はわからない。

厳しい環境におかれても、李軍さんは屈服しなかった。「暴力的な迫害に直面し、私は心を堅めた。殺されても決して修煉をやめない。真実は力。真実を知り、良知を持っている人間は正しい選択をする」。

一向に考えをかえない李軍さんに業を煮やした労動教養所の警官らは、妻にも圧力をかけて、離婚を強要した。

王晶さんは、当時のプレッシャーを語る。「警察署、勤務先のテレビ局、地元の住民管理委員会は一斉に、夫が法輪功をやめないなら離婚するようにと強要してきた。周囲は、どうして夫が堅く信仰を守ろうとするのか理解できなかった。でも、夫を見捨てることはできなかった」。

王晶さんは南京税務局業務科の職員だったが、李軍さんと離婚しないため、昇進の道は閉ざされた。税務局の上司は「厄介なことに巻き込まれないために、君を昇進させられない」と漏らした。

王晶さんの味方は両親だけで、以前の親しい友人も離れていった。王晶さんは自殺を図るほど追い詰められたが、息子のためにそのような考えを頭から消した。

「迫害の中、利益の誘惑とプレッシャーの重圧に耐えられず、どれだけの家庭が離散させられたか。法輪功に対して、中国共産党が迫害を加えたのは学習者本人だけではない。彼らの妻子、親戚も巻き添えになっている」と王晶さんは話した。

(つづく)

法輪功とは何か 受賞歴ある元テレビディレクターの半生から(3)

 


 編集者注

法輪功は1992年、中国吉林省で李洪志氏が伝えた気功修煉法。「真・善・忍」で己を律することを教えた。多くの人が健康増進、ストレスからの解放、精神的な向上を実感して、人気を博した。中国政府の統計で、1999年までに1億人が学んでいた。

当時の江沢民・中国国家主席は1999年、党員数を圧倒した法輪功の勢力を恐れ、弾圧を始めた。国際人権団体フリーダム・ハウスによると、迫害で数十万人が強制労働を受け、拷問で数千人が死亡したという。

2015年5月、法輪功迫害を主導した江沢民元主席を反人道罪などで告訴する運動が全世界ではじまった。2016年5月までに中国国内の告訴人は25万人に達し、アジア地区だけでも、告発状に署名した人は123万人を超えた。

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