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李克強首相が宣誓に立ち会い 宣誓文から消えた言葉とその意義

2016/10/03 更新: 2016/10/03

9月18日、ニュースサイト「大紀元中国語版」から『李克強氏が宣誓を監督、55名の官僚が宣誓、宣誓文から「党に忠実である」が消える(邦題)』と題された文章が発表された。発表文は、特に「党に忠実である」という文言が宣誓文から消えたことに注目している。どうしてその文言が宣誓文から消えたのか、そしてこの宣誓儀式は何を意味しているのか。

 前例のない憲法に対する宣誓

9月18日午前、新しく役職に就いた官僚55人が李克強首相の立会いのもと、憲法片手に職務を遂行する上での宣誓を行った。宣誓に参加した55人の官僚はみな、国務院付属部門および直属機関の責任者だ。

宣誓儀式の法的根拠は北京当局が去年7月に可決した「憲法宣誓制度の施行に関する決定(以下決定)」と、今年の7月20日に李克強首相の主催する国務院常務会議で通過した「国務院及び各部門の任命する国家公務員等の憲法宣誓組織方法(以下方法)」だ。李首相が「決定」と「方法」に基づいて宣誓を監督するのは今回が初となる。

宣誓は中国共産党統治下の中国では幾度となく行われてきた儀式だが、今回から始まる宣誓はそれとは毛色が異なる。中国ではこれまで共産党に対してしか宣誓は行われず、その内容も「共産党のために一生涯奮闘する」というようなものだった。つまり今までの宣誓の対象は中国共産党という政党であり、国家や国民は一党独裁のもと、ないがしろにされていた。そこで今回は憲法に対し宣誓をすることで、公務員は国家や国民に対して責任を持つべきということを示したと考えられる。

そもそも公務員や官僚が党に忠実であることを要求すること自体おかしな話だ。日本で例えるならば全公務員が特定の政党に忠実であることになるが、それはあり得ない。だが中国では数十年前からこのような体制が続き、ここでやっと変化を見せ始めている。公務員は法定の職務をこなせばよく、特定の政党に忠実である必要はない。これは世界の普遍的な価値観である。

 消えた文言とその意義

宣誓文から「党(中国共産党)に忠実である」という言葉が消えたことは、中国政府内における共産党の価値と影響力の低下とみることができる。前述したように、公務員や官僚たちは共産党員ではなく、共産党に忠誠を誓わなくても法定の職務を果たせば国家は機能するものだ。したがって宣誓文から党への忠誠を削ったことは、習近平当局が共産主義の放棄に向けて発した強いシグナルであると考えられる。

中国共産党は成立当初から党の意見を民衆に押し付けて民衆を「代表」し、国民が党に忠実であるように求めた。中国共産党は中国とイコールであるという理念を宣伝し、共産党に異議を唱えれば反革命分子と国家・人民の敵として厳しく弾圧された。極端な例の一つとして、大学入試や大学院入試を受ける時、中国共産党を賛美する「政治」という科目の試験に合格しない学生は大学や大学院に入学できなかった。1999年以降、中国国内の多くの大学生や大学院生は法輪功の学習を放棄しないため学位を取れなかった。李首相の立会いのもと行われた宣誓において官僚の宣誓文から「党に忠実である」との文言が消えたことは、習当局がすでに脱・共産党化を進めていることの現れに他ならない。

 

 どうして憲法なのか

憲法という語は英語でconstitutional law、ドイツ語ではVerfassungと呼ばれ、どちらも国家の構造を示した法という意味だ。近代的な憲法の概念はフランス革命以降に形作られ、憲法は国家の基本形態と統治機構を定めるとともに、国家権力を束縛し国民の自由と人権を保障するものだ。

国家の基本法に対して宣誓することはすなわち法律を尊重・遵守し、法律の定めるところの職権を行使し法定の職務を果たすことを意味する。このことは習当局が現在進めている「法によって国を治める(依法治国)」に直結する。

これに対し共産党政権は一貫して法律や憲法、そして国民の基本的人権を無視してきたと言える。共産党が1949年に中国を占領するとすぐに「土地改革」を行い、地主や抵抗する農民を虐殺し、その財産を奪った。その後の「反右運動」では多くの知識人を右派として処刑し、続く大躍進では数千万人と言われる国民を餓死させた。文化大革命では紅衛兵により多くの文化遺産が破壊され、中国国内で暴力がはびこった。1989年6月4日に起こった天安門事件では戦車と機関銃で一般市民と大学生を殺害し、1999年7月20日からは法輪功学習者に対し国家権力を総動員して弾圧を加えた。

これらの「運動」や政策に法的根拠があったのだろうか、使用した手段は合法的なものだっただろうか。答えは否である。創立当初から違法な活動を行って勢力を拡大し、政権を維持してきた共産党にとって、法の支配を確立させようとする習氏の動きは共産党の息の根を止めることに等しいのではないか。

憲法典に片手を置き宣誓を行う中国高級官僚(写真/人民報)

 法治国家への道

海外中国語ニュースサイト「人民報」が9月19日に発表した評論は、この宣誓儀式を「普通のニュースとは一味違う、画期的な」出来事であり、「『中国共産党による中国』から『中華民族による中国』への転換の現れ」だと評価している。

2011年習近平氏が国家主席に就任し、共産党統治下の中国で計画的に「法によって国を治める(依法治国)」を実施してきた。2014年10月に開催された「第十八期中国共産党中央委員会第四回全体会議(第十八回四中全会)」では「法によって国を治める」のテーマのもと、重大な決定ミスの責任を生涯にわたり追求する制度を作った。2015年5月からは「事件があれば必ず捜査し、訴えがあれば必ず審理する」という原則を裁判所に要求し、その結果約20万人の法輪功学習者及びその親族が江沢民による残酷な迫害と人権弾圧を告発している。

中国時事評論家・夏小強氏の分析では、習当局が生み出した憲法に対する宣誓制度も、習氏が就任後行ってきた「法によって国を治める」に関する一連の政策もすべては江沢民派を駆除・処理するための産物であり、中国政治の核心的問題である法輪功と関係する。

夏氏によれば、これらの現象から分かるのは、習近平氏が行ってきた様々な政策は、最終的に江沢民を逮捕し、彼を裁判の場に引き出すことに照準を合わせていることだ。

(文・文亮)

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