金正男氏がマレーシアで殺害され、関連諸国は神経をとがらせている。中国は北朝鮮との石炭貿易を中止して制裁を加え、マレーシアも抗議として駐平壌大使を帰国させた。北朝鮮の人権問題だけでなく、北朝鮮をテロ支援国家として再指定する問題も国際社会の主要なテーマとして浮上する可能性もある。また、正男氏を非公式に保護してきた中国が不満を露わにするなか、中朝関係の今後の行方に注目が集まる。
韓国政府は今回の事件において背後に誰がいるか、なぜ殺されたのかなどについては、事実関係の確認が必要だという立場だ。しかし、正男氏が北朝鮮の世襲体制を批判するなど、事実上の政治的活動をしていたことは否定できず、金正恩委員長が目の敵を排除しただろうという見方が強い。
北朝鮮の独裁体制に対する国際社会の非難世論はさらに大きくなる見通しだ。一連の核実験による対北朝鮮制裁と人権問題が議論されるなか、今回の事件が一種の「テロ」として認められた場合、米国が北朝鮮をテロ支援国家として再指定する可能性も挙げられる。
米国は1987年の大韓航空機(KAL)爆破事件をきっかけに、北朝鮮をテロ支援国家のリストに載せたが、2008年にリストから除外した。しかし今年1月、北朝鮮をテロ支援国家への再指定を検討する法案が、米下院に提出された。
ソウル大学統一平和研究院研究員のジャン・ヨンソク氏は「法的に今回の事件をテロと断じられるかは定かではないが、重要な人権問題として議論されるはず」「北朝鮮の国連加盟国としての資格問題や、金正恩委員長を国際刑事裁判所に提訴することなどがありうる」と述べた。
張成沢氏の粛清と、金正男氏の暗殺の影響比較
中朝間の主要なパイプ役で北朝鮮ナンバー2だった張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長の銃殺と、金正男氏の暗殺は、北中関係における影響力が異なる。
氏の粛清は、国内政治と外交面の実務レベルまで両国のルートが途切れたため、対中関係の支障が生じたと伝えらえた。しかし正男氏の場合、北朝鮮で有事の場合に中国が代わりに立てることができる「潜在的なカード」だっただけであり、実質的な影響力を持った人物ではなかったという説もある。
ジャン氏は、「中国の立場からすると、米国との関係、北東アジア情勢など、北朝鮮の活用度を一緒に考慮しなければならない」「中国は正男氏の殺害について不満を持っていても、張氏の粛清のときほど関係が悪化する可能性は低い」と述べた。
キム・ヨンヒョン韓国東国大学教授は「予想される中国の反応は、事件の説明を求めることと非公式に遺憾を表明するくらいだろう」「直接的な報復はなくとも、金正恩委員長が使用するぜいたく品などの搬入の制限など、無言の圧力をかける可能性もあり得る」と述べた。
(翻訳・齊潤)
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