このところ、中国当局が都市部の過熱した不動産市場を抑制するため、各種の住宅購入資格を設けてきた。しかし、需要と供給の市場原理により、偽装離婚と偽装結婚によって条件をクリアし、住宅購入権を取得するケースが相次いでいる。
中国の主要都市ではこのところ、住宅購入ブームが再度高まっているが、戸籍制度など様々な障壁により、日本のように誰でも好きな場所で好きな数だけ不動産を購入することはできない。そのため、偽装離婚と偽装結婚により、購入条件をクリアする人が続出している。
偽装結婚を持ちかける方は住宅購入資格を手に入れることができ、偽装結婚を承諾する方もそれなりの謝礼を受け取れるとあって、北京や上海といった大都市では、偽装結婚による住宅購入がもはやチェーン産業化している。
中国共産党中央政法委員会の機関紙『法制日報』が3月24日、北京の「張さん」のケースを報じている。北京市内で働いてはいるものの、北京の戸籍を持っていない張さんは、「戸籍のない場合は5年分の社会保険料を支払うこと」という購入条件をまだクリアしていないため、北京市内の物件を購入することができない。だが、息子が生まれたのをきっかけに、張さん夫妻はマイホームを購入する決心をした。
張さんは北京市豊台区に希望の物件を見つけ、売主との価格交渉も済ませたが、購入資格の問題で物件の名義変更ができない。すると不動産仲介業者が張さんに、「偽装結婚をすれば購入資格が手に入りますよ」と耳打ちした。
他に選択肢のない張さん夫妻は離婚するよりほかになかった。偽装結婚仲介業者は張さんに46歳の北京戸籍を有する女性を紹介し、張さんと女性は婚前協議の契約を行った。この協議の目的は、双方の結婚の目的と財産分与の方法を明確にすることだった。離婚協議の最も重要な部分は、財産分与に関することだった。契約書には「夫婦の共有財産の分割について:北京市豊台区の住宅物産は男性側が結婚前に購入したものであるため、離婚後も男性の所有物とする。双方にその他の共有財産、共同債務及び債権はない。上記男性側に帰属する住宅ローンは、離婚成立後は男性側が支払うものとする」と明記されていた。
離婚協議が成立してから、33歳の張さんと、北京の戸籍を持つ女性と結婚の手続きを行い法律上の「夫婦」となった。「結婚」が成立し、晴れて「夫婦」の北京の住宅購入資格を手に入れることができた張さんは登記簿に自分の名前だけを記入し、この住宅の正式な所有者となった。そして女性と協議離婚の手続きをし、妻と再婚の手続きを行い、これでマイホーム購入が完了。張さんは女性に、偽装結婚の謝礼として6万元(約96万円)を支払った。
張さんは、北京の偽装結婚の相場が今なら、女性は年齢に応じて8万元から10万元(約128万円~160万円)、男性の場合は5万元から8万元(約80万円~128万円)が一般的だと語っている。
新たな住宅を購入するためなら、偽装結婚だけでなく偽装離婚まで行うのが今の中国の現状だ。昨年、上海でも住宅を購入するためにたくさんの夫婦が離婚手続きを取った。その数があまりに多いため、ある区民政局は毎日の数量を限定して許可手続きを行わざるを得なかった。ある三世代家族は楽しそうに笑いながら民政局に離婚手続きに現れた。目的はもちろん、新たな住宅を手に入れるためだ。
(翻訳編集・島津彰浩)
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