中国では現在、悪質な児童虐待事件が多発している。上海市、南京市や湖北省、広西省で起きた事件は相次ぎ報道され、国民の関心が高まっている。
11月8日、上海のオンライン旅行会社・シートリップの社内託児所「携程親子園」で複数の保育士らが2歳以下クラスの幼児らを殴ったり、わさびを無理やり食べさせたり、目や口に消毒液をかけたりしている映像がネットに流され、国中に衝撃を与えた。映像から、ほぼすべての保育士らが虐待に関わっていることが分かった。
事件後、シートリップ社は外部の業者に同託児所の管理運営を委託していたとする声明を発表した。しかし、運営会社の責任者は事件が起こった託児所の責任者が正社員ではないため、責任がないと弁解した。15日の時点で、主管責任が不明なまま、園長と保育士3人らが傷害容疑で逮捕された。
事件から数日後、南京の保育園の保育士も3歳の園児を殴打する映像がネットに流れた。園児は鼻血が出るほど殴られていたが、その場にいたほかの保育士らは見て見ぬふりしていた。
ほぼ同じ日に、湖北省の保育園の保育士は、トイレ掃除用の大きなブラシで幼児の下半身をこすり洗い、ピンタを食らわしていたことも告発によって発覚。
中国では2012年以来、メディアに報道された幼児虐待事件の数は56件に達した。その中で、殴打などの体罰が最も多く、ほぼ半分を占めている。ほかの事件でも、つまようじや注射針などの針状のものを使って幼児を刺したり、食事や飲み物を与えなかったり、睡眠薬などを飲ませたり、紙やトイレットペーパーを無理やり食べさせたりしたことなども挙げられる。
ポータルサイト・網易に掲載された記事(8日付)は、シートリップ社内託児所の虐待事件ではほぼすべての保育士が虐待に加担したことから、単なる「偶然なストレス発散」ではなく、「組織ぐるみの虐待」だったと指摘した。原因について同紙は10日の報道で「深刻な保育士不足」「低学歴・半分近くは無資格」を取り上げた。
オーストラリア在住で北京首都師範大学の元副教授・李元華氏は、政府主管部門の責任逃れや調査を促進する監査部門の欠如によって中国本土ではこうした事件が相次いでいるとの見方を示した。
一方、李氏は事件の背景として中共独裁政権の統治によるモラル喪失の問題が浮き彫りになったとし、保育士らの倫理・道徳観の欠如がこうした事件の根本原因であると示唆した。保育士らは幼い子供の成長に関心がなく、代わりに「泣くなんて迷惑、だから脅して殴打する」とし、乱暴に扱っていたと指摘した。
この事件に巻き込まれた一人の園児の母親はネットで「妊娠するのがどれほど難しいのか。赤ちゃんを産むのがどれくらい難しいのか。1歳まで子どもを育てることがどれほど難しいのか。児童虐待はぜったい許さない」と訴えた。
また中国のネットユーザーからも「伝統的なものはほとんど捨てられた。残ったのはお金と利益のみ」「私たちの教育は失敗で全滅だった。まず人間になるための教育を実施してほしい」「制度問題だ。効果的に監督できる責任部門はない」というような様々な投稿が寄せられたが、当局によりまもなく削除された。
(翻訳編集・王君宜)
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