環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11カ国の閣僚級会合であるTPP委員会は18日、一部の国の同協定への加盟に関してオンライン形式の協議を行った。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、専門家は、加盟を申請した台湾と中国をめぐって、日本の後押しを受けている台湾に対して、中国当局は友好関係にあるTPP加盟国を味方につけ、台湾の失敗を目論んでいると指摘した。
中国当局は昨年9月16日に、台湾政府はその6日後の22日にそれぞれTPP加盟を申請すると発表した。
専門家は、TPP協定の拡大で主導権を発揮し、台湾に友好的な姿勢を示している日本は、台湾が加盟を成功させるキーマンであると指摘した。
主要保証人
台湾政府系シンクタンク、中華経済研究院WTO・RTAセンターの李淳・副執行長は、台湾だけでなく「すべての申請国は『主要保証人』となるTPP加盟国の支持を得なければならない」と指摘した。
「台湾の加盟を歓迎したのは日本だ。日本の立場は非常に重要である。台湾にとって、われわれの主要保証人が躊躇するのであれば、これからの手続きは難しくなるだろう」
李氏は、日本とオーストラリアは、すでに一部の加入手続きを終えた英国の主要保証人であるとの見方を示した。
日本政府は18日、加盟国の首席交渉官は同日のオンライン会合で、英国の加盟について、ルール順守に関する英国の取り組みを確認する協議を終えたと公表した。手続きは次の段階である市場アクセスの協議に進むという。
台湾が昨年9月22日にTPPへの加盟申請を発表した翌日、茂木敏充外相(当時)は台湾の加盟について「歓迎したい」と述べ、「台湾は自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナーだ」と語った。
また、岸田文雄首相は昨年12月10日の参院本会議の代表質問で、台湾のTPP加盟について「歓迎している」と述べ、中国をめぐって「貿易慣行に関して様々な意見があり、しっかり見極める必要がある」とした。
福島県産食品などの輸入再開
台湾政府は21日、2011年の東京電力福島第一原発事故以降に実施した福島県を含む5県で生産された食品に対する輸入禁止措置を解除したと公表した。
台湾のNPO団体、当代日本研究学会の陳文甲・第一副会長は米VOAの取材に対して、日本側が過去10年にわたり台湾政府の輸入禁止措置を自由貿易に反していると批判してきたことを挙げ、台湾政府の措置撤廃で、日本は台湾のTPP加盟をより支援しやすくなると述べた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の佐藤幸人・上席主任調査研究員は、台湾政府の輸入禁止解除で、日本は疑いなく台湾を支持していくと指摘した。
佐藤氏は、台湾はTPP協定の大半の加盟条件を満たしており、ほかの条件をクリアするのも問題ないとした。同氏は、台湾と日本や他のTPP参加国との間の貿易量は少なくないため、台湾の加盟がTPP協定の拡大に有益だとして、日本は他の参加国に働きかけていく可能性が高いと示した。
課題
TPP委員会では、申請国の加盟や交渉入りに関して、すべての参加国の承認が必要になる。VOAは、参加国全員の支持を得られるかどうかは、中国当局の嫌がらせと圧力を受けてきた台湾政府にとって大きなチャレンジであるとの認識を示した。
陳文甲氏は中国と台湾のTPP加盟をめぐって今後、3つの可能性があるとした。
「1つ目は、中国当局が加盟を拒否された後、TPP協定に参加している友好国に、台湾加盟に反対するよう働きかけていく。2つ目は、ハイテク分野で中国本土が台湾に強く依存していることを考え、WTO(世界貿易機関)加盟時と同じように、中国も台湾もTPP協定に加盟する。3つ目は、中国が台湾より早くTPP加盟を実現した後、TPP参加国として台湾の加盟に反対していく」
中国当局の味方
VOAの取材を受けた専門家の大半は、日本政府が最後まで台湾を支持していくと認識している。ただ、専門家は、国際社会が対中陣営と親中陣営に分かれているなか、中国当局がTPP参加国のなかから、どれほどの支持国を獲得できるかに注目している。
陳文甲氏によると、2020年、TPPメンバー国であるペルーと中国の貿易規模は207億ドルに達し、同年のペルーと台湾の貿易規模の50倍となった。陳氏は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加しているペルーは中国側の影響下にあり、中国のTPP加盟をサポートする可能性が高いとした。
李淳氏は、「少なくともシンガポール、マレーシア、メキシコとチリは中国の加盟を支持すると中国側は見ている」とした。しかし、マレーシア政府とチリ議会はTPP加盟を批准していないため、両国はTPP協定の未締結国である。李氏は、メキシコとシンガポールは中国の「主要保証人」になると推測した。
佐藤幸人氏は、中国がシンガポールやペルーなどの友好国にどのように働きかけていくのか、日本は注視していると指摘する。同氏は、中国当局がTPP協定の高い加盟基準をクリアできないとし、中国側が友好国を通じて台湾の加盟を妨害する可能性が高いと指摘した。
同氏はまた、「加盟国に混乱をもたらして対立させるためなのか、それとも加盟国に『1つの中国』原則を押し付けるためなのか」と中国がTPP加盟を申請した目的に疑問を呈した。
東京大学東洋文化研究所の黄偉修・助教授は、台湾側も加盟基準をクリアできるよう取り組んでいるとした。日本の協力を受けている台湾は、最終的に「TPP協定に加盟できなかったとしても」、加盟プロセスを通じて他の参加国との貿易関係を深化させるという成果を収められると同氏は語った。
(翻訳編集・張哲)
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