国連安全保障理事会による9月の対北朝鮮制裁決議の後も、中国籍および北朝鮮籍とみられる船舶が黄海の公海上で石油などを密輸していたことが、米国の偵察衛星の写真により明らかになった。
韓国・朝鮮日報26日付けによると、密輸取引は10月から約30回にわたるという。中朝間の密輸防止を見越していた米国による国連安保理の制裁決議案2375号だが、すでに形骸化が疑われている。同決議案では、北朝鮮へ輸入が禁じられている品目は、船から船への輸送「瀬取り」も禁止すると明記されている。
米財務が異例の衛星写真公開
米財務省は11月21日、中国と北朝鮮の商社に所属する船舶20隻を独自制裁対象に追加した。同時に、北朝鮮船舶「レソンガン(礼成江)1号」が海上で中国籍とみられる大型貨物船と連結する写真を公開した。撮影日は10月19日。
米財務省は「制裁回避のため、石油を船から船へ輸送しているのではないか」と指摘した。現在、北朝鮮は制裁により石油輸入を年間50万バレルに制限されている。
マクマスター米国家安保補佐官は12月13日、「精製油類の瀬取り移送などをかなりの回数、確認している」と述べ、公海上で北朝鮮との密輸に係わる企業に対して「最も厳しい経済制裁に直面するだろう」と強く警告した。
衛星写真と中国当局の発表は矛盾する。中国税関総署が12月26日公表したデータによると、11月は北朝鮮からの鉄鉱石、石炭、鉛の輸入はないとしている。また、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼル、燃料油の対北朝鮮への輸出もゼロとしている。
中国外交部の華春瑩報道官は12月27日の記者会見で、制裁対象となった船舶だけが取引違反となるとの見解を示した。報道官は記事内容を知らないとしながら、「もし彼らが制裁リストに載っていなければ、安保理決議に違反している(していない)ということがどうしてわかるのか?」と述べた。
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中国政府の保護の下、組織的な密輸か=韓国専門家
北朝鮮舶が中国など他国の舶と海上で交易する「瀬取り」は、すでに9月に採択された安保理の対北朝鮮制裁決議2375号によって禁じられている。しかし、北朝鮮の主たる貿易国である中国が、取り締まらない限り、制裁は筒抜けになる。
中国当局は12月20日、米国が安保理の対北朝鮮制裁に違反した北朝鮮舶4隻と外国舶6隻を安保理制裁リストに登録するよう求めたが「検討する時間が必要」とし、処罰に消極的な姿勢を示した。
一部の韓国専門家らは「民間企業が制裁を押し切って交易を続けるはずはない。密輸は中国政府の保護の下、組織的に行われていると考えられる」と述べた。
世界の船舶の動きを記録するマリントラフィックによると、北朝鮮の貨物船クムダエが11月2日と11日に、中国遼寧省盤錦市の港に入出港しているとのデータを示している。北朝鮮専門分析サイトNKnews.orgも、同様の内容を報じている。
中国の「ルール無視」を憂慮した米政府は、12月22日に新たに採択された安保理決議2379号の第9条には「北朝鮮が瀬取り移送を介して不法に石油などを獲得し、欺瞞的な海上輸送形態で石炭や他の禁止された物品を密輸していることに対して、重大な懸念を表明している」と記し、加盟国の取り締まり強化を促した。
ティラーソン米国務長官「挑発が続く場合、国防大臣級会議も検討」
共同通信は26日、レックス・ティラーソン米国務長官が北朝鮮による挑発行動が続く場合、国際的圧力を強化するために来月カナダで開く外交閣僚級会議に続き、国防大臣級会議の開催も検討するとの意向を、河野太郎外相に伝えたと報じた。
軍事的対応を連想させる国防大臣級会議を開くことで、周辺国との対北朝鮮包囲網を徹底構築し、北朝鮮の核・ミサイル開発をこれ以上容認しないとの抑止力になる。
すでにティラーソン氏は19日、北朝鮮の核・ミサイル開発に反対する国際社会の連帯を示すために、来年1月16日にカナダ・バンクーバーで外交閣僚級会議を開催することを決めた。会議には50年代の朝鮮戦争に参戦した国や、国連軍を援助した国が対象となる。日本と韓国も参加する予定。
(翻訳編集・齊潤)
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