[ローマ 5日 ロイター] – イタリア総選挙で新興組織「五つ星運動」は最大の勝者になった。だが皮肉なことに、政権樹立のためにはこれまで批判対象としてきた既存政党と恐らく手を組まざるを得ず、非常に厳しい選択を迫られている。
左右のイデオロギー色を消し去り、既存政治への不満を持つ有権者を取り込んだ五つ星にとって今回の選挙結果は、これ以上ないぐらいの上首尾だった。強力な中道右派連合の過半数獲得を阻止しただけでなく、単独政党としては2位に得票率で約13%ポイントの差をつけて首位に躍進。五つ星を外して政権を立ち上げるのは、不可能ではないにしても相当難しくなった。
五つ星で最も人気がある政治家の1人、アレッサンドロ・ディバティスタ議員は「五つ星抜きの政権はあり得ない。誰もがわれわれを訪れ、話をしなければならなくなる」と胸を張った。
実際に獲得議席数で計算すれば、ディバティスタ氏の正しさが分かる。五つ星を除外して政権を発足させるためには、実質的に他の全ての政党、つまり極右の「同盟」から現与党で中道左派の民主党(PD)までが連立を組むしかない。
ただ五つ星も単独で政権を担当するほどの議席数は持たないため、つい最近まで排除してきた道を行く必要が出てくる。腐敗勢力でイタリア経済凋落の責任者だとこき下ろしてきた主要政党との妥協だ。
五つ星のルイジ・ディマイオ党首にとって政権樹立には3通りの方法があるが、いずれも落とし穴がひそんでいる。1つ目は、やはり躍進して第2党となった同盟との連携。PDと手を結ぶのが2つ目で、最後は複数の政党と連立を組んで主導勢力となるやり方だ。
これまで五つ星と同盟は、欧州連合(EU)の財政ルールや大企業、ユーロに反感を抱くという共通点があり、政治的に連携するのが自然とみなされてきた。
ただ本来的に五つ星と同盟は毛色が異なる上に、ディマイオ氏がユーロ懐疑主義の姿勢を弱めて主要政党側に歩み寄ったことで、最近はさらに違いがはっきりしている。ディマイオ氏は自らの立場を「親欧州」と位置付け、五つ星はユーロ加盟の是非を問う国民投票実施の公約を取り下げた。
しかも同盟と組めば、五つ星が主な地盤としているイタリア南部の多くの有権者が動揺するかもしれない。同盟は逆に北部を地盤としており、改称前の名乗りは「北部同盟」で、指導部や支持者は南部の人々を怠け者などと嘲笑していた。
五つ星が得票率50%に達したシチリア島で、五つ星に投票したある有権者は、せっかくの喜びが同盟の台頭で水を差されたと打ち明け、「(同盟を率いる)サルビーニ氏のような人物がもし首相になればイタリアでは人種差別主義が勝利することになると分からないのだろうか」と警戒感を示した。
それでも過去たびたび五つ星の路線が大きく転換したにもかかわらず、支持者のディマイオ氏に対する忠誠心は変わらないことが証明されており、今後の決定がどうなろうと草の根レベルの反発が起きる公算は乏しい。五つ星のウェブサイトに5日掲載された支持者からの声は、必要ならどんな相手と組んでも政権を担ってほしいというものが大勢だった。
五つ星にとって、既存政党としての特徴が最も強いPDと連携する道も、許容度という面では同盟とそれほど差はないかもしれない。しかし次期首相を選ぶマッタレッラ大統領にとっては、同盟の場合よりもずっと受け入れやすい組み合わせになるだろう。
またディマイオ氏が軌道修正したことで、五つ星とPDの欧州問題や福祉、税制に関する立場に極端な違いはなくなった。
ディマイオ氏とマッタレッラ氏から見ると、幅広い政党連合による連立が恐らく最も好ましい。議会で安定多数を確保し、事前に合意した改革策が承認される可能性が一番大きくなるからだ。
(Gavin Jones記者)
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