1月15日、カナダ政府は数十年初めての不明飛行物体(UFO)に関する報告書を発表した。報告書では、カナダ国内のUFO目撃事件を正式に調査する必要があるとする複数の大胆な提言が盛り込まれている。また、アメリカなど他国に倣い、空に浮かぶ不明物体や光点の目撃情報を調査・研究するための「専門機関」を設立するべきだとと提言している。
「カナダ・スカイ・プロジェクト」の背景
2022年、カナダ首席科学顧問室 (OCSA) は「カナダでのUFO目撃情報を調査する「カナダ・スカイ・プロジェクト」を開始した。未確認航空現象 (UAP) の目撃情報を調査することを目的としており、約30年ぶりとなる政府主導の研究活動である。
首席科学顧問のモナ・ネマー氏はCTVニュースへの書面声明で、「私の役割はカナダ政府に独立した助言を提供することだ。私の提言が首脳たちに真摯に受け止められると確信している」と述べた。
この16ページの報告書プレビューは、プロジェクト開始から2年以上を経て作成されたものだ。完全版報告書は2025年3月に公表される予定だ。
報告書では、「UAP」という用語を主に使用している。この言葉は従来の「UFO(不明飛行物体)」に代わる用語として、より幅広い空中現象を指すものとして使われている。アメリカでは、2022年に設立された国防総省の全領域異常解決局(AARO)が、UAPの目撃に関するデータの収集と調査、および調査結果の伝達のためのアプローチを構築した。
以下は、カナダ・スカイによる報告書の主なポイントだ。
専門機関の設立を提言
報告書の中心的な提案は、カナダ政府に「UAPデータの管理と分析を担う専門機関を設立する」ことを求めている。この機関はカナダ宇宙庁(CSA)などの連邦機関によって構成され、目撃情報の収集、調査、分析結果の公開を行い、またカナダ国民にUAPに関する最新情報を提供し、他国の政府機関や国際的なパートナーとの連携も図るとされている。
報告書では、「UAPの報告管理に、より構造化されたアプローチを導入することは、多くの利点がある」と結論づけた。
「この新たな手法により、透明性が向上し、誤情報への対策が強化されるだけでなく、科学的厳密性と探究へのカナダのコミットメントを国民や国際社会に示すことができる」としている。
一方で、カナダ宇宙庁がこの提言を受けて新たなUAP研究機関を設立するかどうかは現時点では不明である。
UAPは宇宙人の技術か?
アメリカのUFO専門家の証言がある一方で、アメリカ国防総省やNASAは「UAPが超自然的な存在である証拠はない」と明言している。カナダ・スカイの公式サイトも同プロジェクトの研究は「地球外生命体や宇宙人の存在を証明または反証することを目的としたものではない」としている。
ネマー氏は報告書の冒頭で、「本報告書はカナダ国民がUAPを報告するために利用可能なサービスに焦点を当てており、UAPそのものの調査が目的ではない」と述べている。
多くのUFO目撃例は、ドローンや気球、衛星、流星、照明弾、紙灯籠、大気現象、あるいは軍事実験技術だと証明された。しかし、安全上の問題がない限り、カナダ当局はこれらを公式調査しないため、多くのケースは解明されずに終わっている。
専門家の声 「さらなるデータが必要」
保守党議員ラリー・マグワイア氏は2022年からカナダ・スカイ・プロジェクトのような研究活動を支持しており、「現在のUAPの監視や報告方法は統一性に欠け、多くの推測を招いている」と指摘している。
科学作家でUFO研究者のクリス・ルトコウスキー氏は、「UAPがドローン、飛行機、星、衛星のいずれであれ、科学的で客観的な研究が求められる」と述べ、カナダ・スカイの提言を歓迎している。
また、ヨーク大学名誉教授のポール・デラニー氏は「一部の未解決ケースはさらなる研究に値する」とし、「これらを解明するためには、より多くのデータが必要だ」としている。
国民の意識と今後の展望
公的情報源によると、カナダ人は年間 600〜 1千件の UAP 目撃情報を報告している。スカイ カナダ プロジェクトの調査では、回答者の4人に1人がUAPを目撃した経験があるとされている。しかし、そのうち10人に1人しか報告しておらず、約4割がどこに報告すればよいかわからないという。
興味深いことに、多くの国民がUAPに関する情報を収集し、その調査結果を公開する専門機関の設立を支持していることも明らかになっている。
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