「米軍撤退」を宣伝 中国対外工作、ジャーナリストを通じ言論浸透

2018/06/19 更新: 2018/06/19

中国共産党の対外宣伝組織は、資金提供するジャーナリストを通じて、北京に傾く言論の浸透を図っている。

米地方紙ボストン・ヘラルドやネットメディア・Voxは今年に入ってから、香港拠点の非政府組織「中米交流財団(CUSEF)」から援助を受けた記事を載せている。

「トランプ・金会談の勝利者は誰?中国だ」と題したVoxの6月13日付の記事は、在米中国大使館参事官・于敦海氏のインタビューで、中国が米朝会談において、在韓米軍撤退という「平和的解決」に向けていかに働きかけたかを強調している。

ワシントン・ポストの評論員ジョシュ・ロジン氏はVoxに質問する形で「CUSEFの代表は、中国共産党による海外の影響力を拡大させるための組織の主席であることを知らないのか?」とコメントした。

2008年に香港で設立されたCUSEFの代表理事は、香港初代行政長官で、中国人民政治協商会議(政協)副主席の董建華氏が務める。政協は、中央統一戦線工作部(統戦部)とともに、中国共産党政府の政策や意向を浸透させ、影響力拡大を担う機関だ。

CUSEFは「民間スポンサー企業・非政府組織・非営利団体」だと主張している。しかし、米国連邦議会の議事録によると、2012年~2017年まで、同財団は2240万香港ドル(約3億2000万円)を投じて毎年3〜4社の企業に献金し、米国でロビー活動で行っている。

米地方紙ボストン・ヘラルドの記事もまた、于参事の意見として「北朝鮮はもう(核ミサイル脅威)問題ではない。ならば韓国に米軍が駐留する意味はない」と在韓米軍撤退を推す論調を展開する記事を掲載した。

米韓政府は6月19日、韓国で8月に予定されていた両軍の定例合同演習の中止を発表した。しかし、トランプ大統領は、在韓米軍の撤退については明言していない。

小野寺五典防衛相は同日午前の記者会見で、演習中止は、「地域の平和と安定確保の上で、日米共同演習や日米韓3カ国の安全保障・防衛協力と並び、重要な柱」とし、懸念を示した。

中国警戒論高まる米国議会、国防権限法案が上院で可決

米議会では共和党議員を中心に、メディアが中国共産党の対外宣伝工作に利用されているとの懸念が高まっている。米連邦議会上院は19日、2019年度の国防予算の大枠を定める国防権限法(NDAA)案を賛成多数で可決した。総額は7160億ドル(約74兆円)。

NDAAの中国の項目には「米国のメディア、文化組織、商業、学術および政策機関への影響力に対応した、米国の安全保障と軍事的立場を有利にする戦略と目標を掲げる」と記されている。

NDAAの中国項目作成に係わったホワイトハウス上級顧問は、米ワシントン・フリー・ビーコンの取材に対し、米議員たちは、メディアの広範にわたる中国の浸透・プロパガンダ工作と戦っていると述べた。

しかし、同関係筋は、法の効果は限定的だとみている。「米国のマスメディアが、中国政府に紐づく組織からお金をもらい、中国政府を礼賛する滑稽な話を作ってしまうという問題の解決策にはならないだろう」と述べた。

(編集・佐渡道世)