中国共産党政権は、潜在的な敵対国である米国に対抗して、中国の核兵器の「十分な」量を備える構えであることを宣伝した。
中国共産党機関紙・環球時報は20日付の社説で、「中国は戦略核兵器の開発を急ぐ」と息巻いた。南シナ海と台湾における米国の積極的な中国を封じる姿勢を受けて、対抗するという。
同紙は「超核大国であるロシアを敬うトランプから得たヒント」と題した社説を掲載。社説は現在保有する核兵器の量が「まったく足りない」と前置きした上で、「必要以上の核兵器を保有する必要はない」という一部の軍事専門家の考えを否定した。「外部勢力が軍事力で中国を恫喝(どうかつ)できないほどの力を持つべきだ」と主張した。
同記事から、中国共産党はこのたびの米ロ会談で、米国は軍事力を重視し、しかも膨大な核兵器の備蓄に重きを置いていると受け止めた模様だ。
米国が積極的に南シナ海問題と台湾問題に取り組んでいることについて「米国は、中国の核戦力が『十分ではない』と認識している。米国の戦略的な攻撃性は、絶対的な核の優位性からきているのだろう」と書いた。
社説は最後に「核兵器の開発の強化は、国家の核心的利益を守るための最重要事項でなければならない。目下の急務だ」と強調した。
一方、ネットユーザーは冷ややかな態度を見せた。「アメリカと軍拡でも展開すれば、即座に潰されるだろう」「跋扈(ばっこ・はびこること)は命取りだ」
核兵器開発を進める中国
中国は自国の核弾頭数を公表していない。2018年6月のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によると、中国は現在約280発の核弾頭を保有している。昨年から10発増、2010年から約40発増となった。世界で最多の核弾頭を保有しているのは米国とロシアで、それぞれ7000発。
中国は近年、核兵器の運搬システムの開発を進めてきた。現在、世界の広範囲をターゲットとする大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」を開発中だ。
米シンク・タンクの外交問題評議会(CFR)原子力安全委員会事務局パトリシア・キム氏によると、中国の軍事専門家は、「核兵器を最初に使用しない」「報復攻撃の能力」といった既存のルールを変えて、「核攻撃を受けていなくても、通常兵器では対抗できないような大規模な外部侵攻」に核攻撃の行使を主張しているという。中には、中国と領土問題が存在する国を抑制するため、既存ルールの完全撤廃を主張する過激な専門家もいる。
7月にリークされた2018年2月の中国軍の内部資料によると、軍改革で「国土防衛型」から「外向型」になるとの方針転換が明らかになった。それによると、「大国は軍事強国であることが不可欠」と明記され、世界的に軍事プレゼンス(存在感)を拡張させていくことを示唆した。
米国国防省が2月発表した核態勢の評価報告書で、ロシア、北朝鮮が脅威であると指摘した。キム氏は、中国はますます米国に追随して核技術の向上を図っており、なおかつ米国の、中国に向けられた核の脅威にも警戒している。中国は「国防」の名のもとにミサイル防衛・攻撃システムを世界展開しており、同時に核兵器の戦略的な発展を目指しているとした。
(編集・佐渡道世)
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