オーストラリア政府はこのほど、同国政治家や政治団体に多額の献金をした中国人の富豪・黄向墨氏の永住権を取り消した。同富豪は中国共産党がバックアップする在豪中国人団体のトップを務め、近年豪州に対する中国の浸透工作において中心的な人物とされ、スパイ疑惑もある。豪州政府は昨年、中国を念頭に成立した反スパイ法を、今回初めて運用した。
同氏の帰化申請も却下された。豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(The Sydney Morning Herald)やエイジ(The Age)が6日伝えた。
黄氏は2001年、深圳で不動産企業を創業し、2011年に豪州に移住した。豪州でも不動産売買で成功を収め、豪州の2大政党に合わせて270万豪ドル(約2億1千万円)の政治献金をしてきた。
さらに、2013年にシドニー工科大学に180万豪ドルを寄付し、豪中関係研究所を設立した。黄氏は会長、ボブ・カー元外相は所長を、それぞれ務めていた。同大の職員は2016年メディアに対して、研究所の出版物が「共産党の宣伝品のようだ」と、研究所の中立性と独立性について懸念を示した。同大はその後、研究所を解散した。
2015年、黄氏は豪州中国平和統一促進会の名誉会長に就任した。同会は中国共産党中央統一戦線工作部の豪州支部にあたる。
また、黄氏の企業から旅費などを受け取った労働党の、サム・ダスティヤリ(Sam Dastyari)元上院議員は、2017年、中国メディアが対象の記者会見で、労働党の方針に反し、南シナ海問題で中国の主張を擁護する発言をした。ダスティヤリ氏は黄氏が豪州当局の捜査対象になっており、盗聴されていることを黄氏に漏らしていた。ダスティヤリ氏は同年12月、議員を辞職した。
豪州の情報当局は15年、黄氏など複数の中国人が共産党とつながっていることを指摘した。国会議員がこれらの人物から資金提供を受けることは「危険」だと警告していた。
黄氏は昨年11月に豪州を出国し、現在香港に滞在している。再入国すれば、国外退去処分を下されるとみられる。
米マイアミ大学の金徳芳教授は、米ラジオ・フリー・アジアに対して、「豪政府は、内政を干渉する中国当局に強硬姿勢を示した」と述べた。連邦議会は昨年、外国からの政治献金を禁止する改正選挙法を可決させ、外国人のスパイ活動などを阻止する法律も通過させた。
ペイン外相によると、現在中国当局からの抗議はない。外相は、黄氏の永住権取り消しは豪中関係の悪化につながらないとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)
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