5月3日、米保守系シンクタンク・クレアモント研究所が後援する「多文化主義対アメリカ」と題したイベントが、ワシントンで開催された。専門家は、多文化主義は国家や国民の意識が欠損していると指摘した。
イベントに出席した米国を代表する知識人の多くは、多文化主義を、敵勢力が分断工作を働き征服しようとする試みだと定義し、米国にとって脅威であるとの見解で一致した。
例えば、多文化主義は「米国人を人種、民族、性別、性的指向などで過度に細かく分類」しようとしている。さらに性同一性や、性自認、性障がいを含め多様に分類され、政府は政策や法律で保護することを強いられる。
クレアモント研究所の上級研究員クリストファー・コールドウェル氏によると、多様な分類の保護は、米国の核心的理念である「自由」から派生しているが、今日、これらの人々は「反差別」と取り違えていると述べた。
コールドウェル氏によると、保護権利を享受できる多文化主義派は「コロニーの形成」のようにますます細微な分類に増加する傾向があるという。
また、小さな権利集団の拡大により、有権者は個別権利の行き過ぎた主張に不安を抱き、米国主義を掲げるドナルド・トランプ候補に投票する傾向が強まったという。イベントに参加したある有権者は、トランプ候補への支持として、彼のキリスト教信仰心を挙げた。
米国人の半数が、宗教を国の文化の重要な一部と信じている。イベントに参加した、倫理と公共政策センターの上級研究員ヘンリー・オルセン氏は、米国が単一文化を持つか、あるいは異なるさまざまな文化を持つかを質問する調査データを紹介した。
オルセン氏は、結果が、トランプ候補とヒラリー候補を分けていることを説明した。ヒラリー支持者の77%は、米国には異なる多様な文化があると考えており、トランプ支持者の54%が、米国は基本的に一つの文化でつながっているとの意見を示した。
オルセン氏は、両候補の支持者が、それぞれ米国人であることに対する価値と意義に、大きな隔たりがあることを物語っているとした。
オルセン氏の2016年の大統領選に関する世論調査で、調査対象者の71%が「たとえ一部の人々が気分を害したとしても、米国人は、米国が直面している問題について率直に話せる環境が必要だ」と答えた。残りの22%が「異なる背景や価値観を持つ人々の気分を害さないように、自分たちが使う言葉に、もっと注意を払う必要がある」と答えた。
しかし、同時に、自らを非常に保守的だと自認している人々の71%が、自分たちの考えは「よりまれになり、受け入れられなくなっている」と社会の不寛容さを感じている。こうした見方は、非常にリベラルだと自認している人の場合は少なく、18.4%に止まっている。
自由主義を掲げながらも、排他的になる傾向には、インターネットの多文化主義も拍車をかけているという。保守系米誌「人類事情(Human Events)」の編集責任者ラハーム・カサン氏によると、大手SNSのフェイスブックやインスタグラムでは、保守層の評論家であるローラ・ルーマー氏、アレックス・ジョーンズ氏、ポール・ワトソン氏らは同SNSで歓迎されていない。
ルイーズ・ファラハン(Louis Farrakhan)氏は、米紙ワシントン・ポストや英誌アトランティックに過激派というレッテルを貼られていると訴えた。ファラハン氏は最近、フェイスブックの役員から電子メールで、SNSでは「ヘイトスピーチは許されてない」との内容のメールを受け取ったという。
フェイスブック役員は、「人種、性別、ジェンダー、性自認、深刻な障害や病気という保護されるべき分類の人々に対して『攻撃』する発言は、暴力を引き起こす言論になりうる」とファラハン氏に警告した。
ファラハン氏は10数年前、「男性は女性になることはできない」と主張したことで、SNS内で論争を巻き起こした。ファラハン氏は、このコメントは、自身の信仰に基づいた主張に過ぎないと弁明した。さらに、性自認に苦しんでいる人は悩みを公にするよう促されると、ストレスにより自死のリスクが高まるという統計的な事実に基づいているとした。このため、フェイスブックが自身の意見を『攻撃』と批評するには当たらないと述べた。
保守的意見を発表するシンクタンクは、インターネット企業からの風当たりが強まっている。グーグルは5月初旬、クレアモント研究所の広告を禁止した。主張は人種差別的だという。4月23日、同所の運営する情報サイト「アメリカン・マインド」で、所長ライアン・ウィアムズ氏は「多文化主義がアメリカの伝統的価値観を損なっている」と主張する文書を発表した。
(文 クリストファー・フル/翻訳編集・佐渡道世)
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