景気が後退しているにもかかわらず、中国の物価が上昇している。アフリカ豚コレラのまん延で、豚肉価格高騰の影響を受け、8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.8%上昇した。上昇幅として6年ぶりの高水準となった。インフレ圧力が高まるなか、中国当局は豚肉価格の急騰を政治問題と捉えた。官製メディアは国民に「消費を抑えよう」と呼び掛けた。
CPI構成品目のうち、豚肉小売価格は同47%上昇したことで、8月のCPI指数を1.08%押し上げた。また、豚肉は7月と比べて19.7%上昇した。
CPIの上昇幅は6カ月連続2%を上回っている。中国当局は、CPIの上昇幅を3%以内に抑えることを目標に掲げている。この目標を達成するため、中国国家統計局は今年に入ってから、CPI指数のうち豚肉が占めるウェイトを2.5%から2.35%に縮小し、さらに現在の2.15%に引き下げた。
一方、国家発展開発委員会の発表は、中国34の省レベル行政区のうち、8割以上の地域においてCPI指数がすでに3%以上を上回ったと示唆した。
中国国家発展開発委員会が8月29日発表したニュースリリースによると、4月以降「物価上昇による国民生活への影響を減軽する」ために、29の省及び新疆ウイグル自治区の各地方政府は、「社会救助・保障基準と物価上昇を結びつける価格補助金連動メカニズム」を運用し始めた。この措置では、「生活苦に直面している延べ9000万人余りに24億元(367億円)の価格臨時補助金を支給する」という。
当局の規定では、前年同月と比べて、CPIの上昇率が3.5%以上、またはCPI構成品目である食品価格の上昇幅が同6%以上となった場合、同メカニズムを運用開始できる。
中国の胡春華・副首相は8月末に、「豚肉の供給を確保するためにすべての方法を活用しなければいけない」と発言した。副首相は10~11月期と来年上半期において、中国の豚肉不足が「より深刻になる」とした。
昨年から発生したアフリカ豚コレラで、中国当局は約120万頭の豚を殺処分した。中国当局の統計によると、2018年中国では約5400万トンの豚肉を出荷した。今年1年間の出荷量は4000万トンにとどまるとの見通しだという。
中国共産党機関紙・人民日報傘下の「生命時報」は10日、「豚肉を食べ過ぎる健康に害を与える」との評論記事を発表した。同記事は、栄養士の話を引用し、「大量に豚肉を食べるのは健康に悪い。食生活習慣を見直し、豚肉の消費を減らすべきだ」とした。ネット上では、豚肉の小売価格の急騰を抑えるためのプロパガンダだとの反論が目立つ。
米紙ワシントン・ポスト9日付は、中国最高指導部にとって現在最も厄介な問題は、米中貿易戦や香港の抗議デモではなく、豚肉の供給不足と価格上昇だとの認識を示した。「中国は世界の半分以上の豚肉を消費している」ため、豚肉を買えない低所得世帯の怒りは中国共産党の統治を揺るがしかねないとした。
「“人民に幸せな暮らしを”、これは共産党のスローガンの一つだからだ」
(翻訳編集・張哲)
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