神戸市会 臓器移植の環境整備求める意見書可決

2019/10/31 更新: 2019/10/31

兵庫県神戸市会で10月28日、臓器移植の環境整備を国に求める意見書が可決した。移植希望者が海外で人権問題に関わりかねないとして渡航移植の回避を促す意見書は、日本の地方議会から今回を含めて84件が可決している。

この意見書では、1.臓器移植と臓器提供について、家族単位で話し合う等、啓発に努めるよう促す 2.臓器提供施設を増やす支援 3.移植コーディネーターの確保と支援 4.移植担当医の負担軽減 5.諸外国での臓器移植の実態調査 の5項目の実施を国に要求する。

神戸市会の意見書は自民党、日本維新の会、立憲民主党など党派を超え67議員(全69議員)が賛成し、可決した。神戸市会の安達和彦議長は大紀元の取材に対して「臓器移植のおかれた環境について各党の問題意識があらわれた結果。国会や政府に対して5項目実現に向けて働きかけたい」と回答した。

意見書本文では、イスラエルとスペイン、台湾の臓器移植法が、渡航移植の禁止へと改正された例を挙げている。これらの国は、2006年および2016年に人権弁護士デービッド・マタス氏、カナダ政府元閣僚デービッド・キルガー氏らが発表した、中国の臓器移植と人道犯罪についての報告調査書を引用している。報告によると、中国では無実の罪で収監された少数民族や宗教信仰者が、国内外の臓器移植希望者のための「需要に応じたドナー」となり、本人の意思に関係なく臓器を強制摘出され、証拠隠滅のために焼却処分されている。中国の移植手術件数は6万~10万件と推定している。

移植環境の不整備な地域への渡航移植は、人道犯罪にかかわるリスクがある。日本は、渡航移植の停止を呼び掛ける国際宣言「イスタンブール宣言」(2008年)に署名しているが、法的拘束力はない。国会や政府で、渡航移植を抑制するための臓器移植法の調整は見られない。ノンフィクション作家の高橋幸春氏は「現代ビジネス」への寄稿文で、実際にパキスタンで渡航移植を受けた日本人が、ひん死の状態で帰国した例を挙げている。また、日本人を200人以上渡航移植に仲介した日本のあっせん業者の存在も指摘している。

意見書可決まで取りまとめた、神戸市会の福祉環境委員会・五島大亮委員長は「日本政府は移植ツーリズムに関する十分な注意喚起をしておらず、危険性の認知は高くないようだ。国民を安全上のリスクにさらしかねない」と大紀元の取材に述べた。

意見書に賛成した議員のひとり、上畠寛弘議員は、日本の移植環境整備により中国の臓器収奪問題の停止に繋がるとの考えを語った。「中国では、法輪功学習者やウイグル人、チベット人が壮絶な状況に置かれていると聞いている。特に臓器狩りは、決して容認できるものではなく、自由と人権を重んじる国々の連携によって、問題を阻止しなければならない」と取材に答えた。

神戸市会の意見書が可決した10月28日、駐日中国大使と中国総領事が神戸を訪問している。上畠議員は、「このような日に議会として意思表示できたことは、とても意義深い」とした。来春は中国・習近平主席が来日する予定だ。議員は、問題意識を共有する国会議員や地方議員と連携して、「中国の臓器狩りをストップさせるよう中国に圧力をかけたい」と述べた。

前出の、中国臓器移植問題を調査したマタス弁護士は2019年3月に来日し、日本人が中国への渡航移植に関わり、犯罪に巻き込まれるケースを防ぐため、1.ブローカーによる国外での臓器取引も犯罪と定める法律を制定 2.米議会や欧州議会のように中国の臓器強制収奪について批判する決議案を可決する 3.臓器狩りに関わる中国高官に経済制裁を科す、米国のマグニツキ―法と同類の法案を可決することなどを提言した。

米国務省は2019年5月、年次の「国際信教の自由」報告書のなかで、「中国当局は信教を理由に刑務所内で臓器を摘出しているとの報道が複数回ある」と記している。

同年6月、人道犯罪を第三者が検証して裁定する「民衆法廷」は、中国の強制臓器収奪が長きにわたって相当な規模で行われていると結論付けた。民衆法廷の顧問弁護士を務めたハミッド・サビ氏は9月下旬、スイスのジュネーブで開かれた国連人権理事会に出席。中国の臓器収奪問題の停止に取り組むよう、委員会と各国政府に呼び掛けた。「何の害もなく暮らす人々から臓器を取り出すことは、今世紀最悪の大規模な虐殺のひとつだ」「この犯罪行為に取り組むことは、国連加盟国の法的責務だ」とサビ氏は強調した。

(文・佐渡道世)

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