ドイツ情報当局、「毎月、中国のスパイを摘発」年次報告で警鐘

2020/07/15 更新: 2020/07/15

ドイツのホルスト・ゼーホーファー内務相はこのほど、中国情報当局による活発なスパイ活動に警鐘を鳴らした。また、内務省管轄下の情報機関、連邦憲法擁護庁(BfV)は最新報告書で、国内で増える中国企業の買収案は国家安全保障に脅威を与えていると強調した。

ゼーホーファー内務相は、BfVが7月9日に公開した2019年版「連邦憲法擁護報告書」で、「2012年11月に中国で習近平政権が発足して以降、情報機関は中国共産党政治体制における重要性がさらに高まり、政権を維持するための中心的な役割を果たしている」との見解を示した。

報告書は、中国当局がハイテク技術分野での競争力を高め、産業振興政策「中国製造2025」を成功させるために、独企業の買収を積極的に進めているとした。BfVは、中国当局が投資や買収を通じて独企業の重要な技術情報を入手しているため、ドイツの安全保障が脅されていると警告した。

BfVは報告書において、中国当局はスパイ活動を通じて独国内に強い影響力を行使していると指摘した。中国情報機関は各国で、情報提供者をリクルートしている。当局は、スパイらに対して、ビジネス・ソーシャルメディアLinkedIn(リンクトイン)などを利用して、経済、科学、技術などの分野での諜報活動を指示している。

また、BfVは、中国共産党政権と中国の経済活動が緊密に関係しているため、独企業は、中国当局が主導する産業スパイ活動とライバル企業によるスパイ行為を識別するのが難しいとの見方を示した。影響力の大きい独企業は、中国産業スパイの狙いだという。中国の国家ぐるみの産業スパイ活動と「サイバー攻撃による違法な技術情報の移転」は、独の国内経済に「深刻な損失をもたらした」。

報告書は、中国勢による重要な独技術企業への買収件数は減少しているものの、中国側は依然として「長期的な投資戦略として、独企業の買収を続けている」とした。両国が「経済相互依存の関係にあるため」、独政府は場合によって「政治的な譲歩をせざるを得ない」。

BfVは報告書において、2018年以降、欧米各国は、APTを含む中国当局のハッカー集団に注視していると明らかにした。これらのハッカー集団は、HyperBroやFocusfjordなどのマルウェアを使って各国の政府機関にサイバー攻撃を行っている。BfVは、世界の覇権を目指す中国当局は世界各国での諜報活動を引き続き強化していくと警告した。

6月末に開催された独連邦議会監視委員会では、同国の情報機関当局者は「ほぼ毎月、国内で中国のスパイを摘発している」と発言した。

一方、BfVの報告書によると、中国当局は自国民だけではなく、中国に住む他国の外交官、学生、科学者、実業家と観光客を監視している。2019年5月以降、中国当局は外国人の入国手続き管理を強化した。外国人が書類を記入する際、より多くの個人情報が求められた。これらの情報に基づき、中国情報機関は外国人を、政治、経済などの各分野により分類しやすくなった。

また、中国当局は、アリペイ(支付宝、Alipay)やウィーチャットペイ(微信支付)などの中国系オンライン決済を通して、ドイツ国民の個人情報を収集している。

BfV報告書は、中国当局は現在すべての反体制活動グループを厳しく監視していると示した。当局が最も敵視しているグループは、ウイグル人、チベット人、法輪功学習者、民主活動家、台湾独立派だ。2019年夏以来、中国当局は香港の抗議活動を支持する人々を反体制派として取り締まりを強めた。

中国当局は7月1日、香港で国家安全維持法を施行した。独外務省は、香港滞在中にドイツ国民も国家安全維持法の取り締まりの対象になりうるとして、香港への渡航に注意を促した。ドイツの一部の政治家は政府に対して、香港との犯罪人引渡し条約を撤廃するよう求めている。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: 中国