オーストラリアのニューサウスウェールズ州議会は近日、同州の高等教育の発展に関する調査報告書を発表した。報告書は、大学が中国と経済的なつながりを持っているために浸透工作の標的になっていると警鐘を鳴らした。
ニューサウスウェールズ州議会は昨年5月、調査委員会を設立し、大学に対する外国の影響を議題に含めた。同年9月、調査委員会は2回の公聴会を開催した。先月22日、委員会は最終報告を発表した。
中国人留学生に対する依存が原因
調査委員会はニューサウスウェールズ州の各大学から外国による干渉や浸透の証拠を集めた。委員会の主席を務めるニューサウスウェールズ州上院議員のマーク・レイサム(Mark Latham)氏は報告書の冒頭で、同州の大学に在籍する海外からの留学生、特に中国人留学生の数は年々増加しており、各大学の重要な収入源になっていると指摘した。中国人留学生の学費は、シドニー大学とニューサウスウェールズ大学の収入の30%を占めている。
報告書は、大学が外国と緊密な経済的関係にあると、外国の影響や干渉を受けやすくなり、大学の管理に大きなリスクをもたらすと指摘している。大学側がこれらのリスクを適切に管理できなければ、学問の自由を保障できなくなる。さらに、経済的利益を失いたくないために、大学側が外国による干渉のリスクを放置する可能性もあるという。
中国共産党政権や香港民主化運動に関連する出来事も取り上げられている。昨年8月、ニューサウスウェールズ大学の講師エレーヌ・ピアソン(Elaine Pearson)氏がツイッター上で、中国共産党が香港の民主主義を破壊していると批判したところ、大学側に投稿を削除された。クイーンズランド大学の学生ドリュー・パブロウ(Drew Pavlou)さんは香港の民主化運動を支持し、中国政府との密接な関係を見直すよう大学側に呼びかけたため停学処分となった。
レイサム主席は、「ニューサウスウェールズ州の各大学は幼稚にも中国人留学生がもたらす経済的利益に依存し、中国共産党政権の望むとおりに行動しているが、これは良い結果をもたらすはずがない」と書いている。そして、大学の収益源の多様化とリスク管理は外国による干渉を防ぐうえで急務となっており、持続可能な発展に不可欠だと指摘した。
献金の裏に潜む大きなリスク
委員会は外国人による大学に対する献金にも懸念を表明している。報告書では、中国人実業家の黄向墨氏がウェスタンシドニー大学の豪中芸術文化研究院(Australia-China Institute for Arts and Culture)に350万豪ドルの献金を行い、シドニー工科大学(UTS)の豪中関係研究所(ACRI)の設立に際して180万豪ドルの献金を行ったことについて触れている。
2019年2月、オーストラリア政府は黄向墨氏の永住権を取り消した。同年、黄向墨氏はオーストラリア税務局に起訴された。また、ニューサウスウェールズ州の汚職撲滅委員会も黄向墨氏の政治献金について調査している。
シドニー大学の准教授Salvatore Babones氏は、中国政府が「千人計画」を通してオーストラリアの大学に情報工作を仕掛け機密情報を盗んでいるのではないかと疑っている。
Babones氏は委員会に宛てた提案のなかで、「千人計画」には機密情報の窃取という動機が隠されており、大きな脅威であると指摘した。「千人計画」に参加するオーストラリアの学者たちは中国政府から口止めされているため、オーストラリアの大学は彼らが中国で「副業」に勤しんでいることなど知る由もない。したがって、国家安全保障にかかわる研究者が「千人計画」に参加すれば、機密情報を漏洩する。
最後に、委員会は各大学に対し、「2018年外国影響透明化法(Foreign Influence Transparency Scheme Act 2018)」に基づき、外国の干渉を排除するための基本方針を策定するよう呼びかけた。
(記者・李睿/翻訳・文亮)
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