東欧のリトアニアは今年2月、中国と中東欧17カ国の経済協力枠組み「17+1」から離脱すると表明した。同国政府はまた、3月に台湾に事務所を設置する方針を明らかにした。専門家は、自国の理念と価値観を守るために中国との経済利益の放棄を選んだリトアニアは、「欧州諸国にとって稀な模範である」と称賛した。
中国当局は2012年、巨大経済圏構想「一帯一路」を推進し、欧州の入口である中東欧で影響力を拡大する狙いで、中東欧諸国と「17+1」を設立した。
ドイツメディア「ドイチェ・ヴェレ(DW)」のコラムニストで、ロシア人ジャーナリストのコンスタンチン・エッガート(Konstantin Eggert)氏は5日の寄稿で、「リトアニアが中国当局との関わりを断ち、台湾と貿易関係を結ぼうとする姿勢は、欧州連合(EU)の国として非常に大胆な行動である」との見方を示した。リトアニアの態度は、中国に友好的な姿勢を示しているハンガリーなど他の中欧諸国とは対照的だという。
エッガート氏によると、人口300万人未満の小さな国であるリトアニアは、ロシアとウクライナの紛争において、ウクライナの主要な支援者だ。リトアニア政府は、ウクライナ軍に訓練や医療支援を行い、政治的・外交的にも力強い支援を行っている。また、リトアニアは、ロシアの反体制派活動家の主な移住先の一つでもある。
エッガート氏は、リトアニアが過去の歴史に基づいて、大国である中国共産党政権とロシアに挑んでいるとの見解を示した。旧ソ連のスターリン独裁政権の下で、リトアニアと隣国のラトビア、エストニアは独立を失った。権威主義体制への対処方法を知っているリトアニアは「(権威主義体制に)尊敬されたければ、毅然とした態度をとり、犠牲を払う覚悟をしなければならない」と心得ている。
エッガート氏は、台湾に事務所を設置する決断は、リトアニア政府が熟慮した結果だと指摘した。同氏は、中国当局が貿易分野でリトアニアに報復措置をとれば、それはリトアニアの輸出業者にとって新たな市場を開拓するチャンスだと、同国政府には分かっているとした。
ロシアがクリミアや東ウクライナを併合した後、EUはロシアへの制裁を科した。ロシアは、対抗措置としてEUの食品輸入を禁止した。「リトアニアは当時、この経済的打撃にうまく対応できた」という。
同氏は、リトアニアの姿勢は、他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して中国当局の挑発に立ち向かうよう促していると指摘した。
リトアニアのガブリエリュス・ランズベルギス(Gabrielius Landsbergis)外務大臣は3月初め、「17+1」は「リトアニアにほとんど利益をもたらさなかった」と発言した。中国をめぐって各国の間で対立が生じ、「欧州は分断化している」と述べた。
同国のマンタス・アドゥメナス(Mantas Adomėnas)外務副大臣は3月9日、米ニュースサイト「Axios」のインタビューで、「人権や価値観は、『17+1』の議題の対象ではない。これらの問題を議論に持ち込もうとしたが、(中国側の)反応がなかった」と明かした。
副大臣は「西側諸国が民主主義を拡大しなければ、われわれはソビエト連邦の支配から抜け出せない。したがって、この(中国との)ゲームに戻らなければならない」と述べた。
(翻訳編集・張哲)
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