菅義偉首相は5月27日、オンラインで欧州連合(EU)のミシェル大統領やフォンデアライエン欧州委員長と首脳会談を行った。双方は共同声明で、東シナ海・南シナ海情勢や中国当局による香港・新疆での人権侵害問題などで意見交換し、初めて台湾問題に言及した。
共同声明は、中国当局を念頭に「包摂的で、法の支配および民主的価値に基づき、威圧によって制約されることのない、自由で開かれたインド太平洋に向けた協力を強化する」と強調した。また、声明は「東シナ海および南シナ海における状況を引き続き深刻に懸念し、現状を変更し、緊張を高めるあらゆる一方的な試みにも強く反対する」「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と記した。
4月の日米首脳会談、5月の先進7カ国(G7)外相会合と米韓首脳会談に続き、EU上層部も公に台湾海峡問題に言及した。
27日の首脳会談で、EUのフォンデアライエン欧州委員長は、日本とEUは二国間貿易を促進し、世界貿易機関(WTO)の改革に向けて協力すると述べた。委員長はまた、EUは東京オリンピックの安全な開催を支援するため、日本に対して中共ウイルス(新型コロナウイルス)ワクチンの輸出を増やしていくと示した。
茂木外相は5月初め、中国側の影響力拡大に対抗するインド太平洋戦略を欧州で推進するため、中東欧6カ国の外相と会談した。
6カ国のうち、チェコ、ハンガリー、ポーランドとスロバキアから構成されるヴィシェグラード・グループ(V4)は、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に加盟している。5月7日、茂木外相が訪問先のポーランドでV4各国の外相と協議した際、各国外相は、科学技術分野における日本と西バルカン半島諸国の協力深化のほかに、日本の「三海洋イニシアチブ(Three Seas Initiative)」への参加について意見を交換した。
「三海洋イニシアチブ」はアドリア海、黒海、バルト海地域の中東欧12カ国による協力フォーラムである。12カ国はEU加盟国でもある。
日本は、インド太平洋戦略の推進と三海洋イニシアチブへの参与を通じて、中東欧との連携を強化し、中国当局の拡張的な動きを抑制する意図があるとみられる。
日経アジアレビュー28日付によると、中国当局が中東欧各国に約束したインフラ分野の投資が停滞していることで、中東欧各国は中国当局への熱意が冷めている。これに加え、中国当局による人権侵害の懸念から、中東欧各国は米国との連携を強めている。専門家は、中東欧各国は今後引き続き、中国当局と距離を置くとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)
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