2021年7月1日の建党100周年記念大会に向けて宣伝活動に本腰を入れる中国共産党(CCP)が、同党中央委員会総書記を兼任する習近平(Xi Jinping)主席を中華人民共和国(中国)建国の父とされる毛沢東(Mao Zedong)初代国家主席の次に権威ある指導者として祭り上げる中、中国本土全体で同主席への崇拝意識がますます高まりつつある。
日本経済新聞社発行の日本国外向け新聞「日本経済新聞国際版」が習主席の「誇大宣伝」と表現した事例の中には、上海に開館した記念館に他のどの中国最高指導者よりも多くの同主席の写真や映像が明らかに目立つように展示され、100周年に向けた記事を報道する中国共産党機関紙「人民日報」の一面は今や同主席に関する記事で埋め尽くされているという現状が含まれる。
100周年に向けて人民日報が特集した中国歴代指導者の格言100選の中で、他のどの指導者よりも多い30選が習主席と毛沢東の言葉で占められている。これは中国共産党の歴史においてこの2人が同様の重要性を持つことを示唆するものであると日本経済新聞国際版は報じている。
アナリスト等の見解によると、中国共産党の宣伝活動の中には中国共産党の歴史を再考して修正を加えて習主席の構想を支持しながら、2021年までに適度に裕福な中国を確立することを目指して中国共産党が掲げた目標「中国の夢(中國夢)」を達成したことを強調する作戦が含まれる。
2021年6月のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事には、次のように記されている。
「現在、米国からの圧力や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対策の初動の遅れに対する批判といった外部課題に直面している中国は、100周年に向けた宣伝活動により中国共産党の過去の悪行に対する内省を抑え、これまで戦争や混乱に耐え抜きながら中国の台頭を達成した不屈の力として自国を描写することを目指している 」。
「かつてのソビエト連邦共産党と同様に中国共産党は歴史を捏造してきた。毛沢東の存在を強調し、不純分子の役人を消去するために数ある写真を修正し随時党の優先事項を促進するために歴史の教科書や博物館を作り変えてきた」
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じたところでは、2021年4月、これまでも厳重に管理されていたインターネットサイトから党首や政策への批判を含む内容を一掃するため中国共産党はサイバー取締活動を開始した。中国共産党はまた、数週間前に「共産党がなければ新しい中国はない(没有共产党就没有新中国)」などの愛国歌を集めたコンサートを開催している。
同紙によると、現在、大学入試試験には愛国心と中国共産党に対する忠誠心を高めることを目的とした中国共産党史に関する問題が含まれており、毛沢東の過ちや失敗を削除して改訂された本が出版されている。
毛沢東の公式伝記「毛沢東傳」の編纂に参画した中国共産党中央文献研究室の高文謙(Gao Wenqian)元室務委員はウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して、「世界情勢が劇的に変化する中で共産党の存続を確保して独自の規則を強化することが目標である」と説明している。
天安門広場で民主主義を求めて抗議する人民を中国共産党が虐殺した「六四天安門事件」発生後、高元室務委員は米国に移住している。 特に中国共産党が他に類を見ないほどに常時自党の利益のみを優先する組織であるという点から、同党が中国の外見や外交的・経済的未来を管理することで悪影響がもたらされる可能性があると、専門家等は警告している。
チャイナ・チャンネル社(China Channel Ltd.)のボニー・ジラード(Bonnie Girard)社長は、2021年5月にオンライン雑誌のザ・ディプロマット(The Diplomat)に掲載された記事で、「今回の宣伝活動の基本的目標は、中国共産党の創立以来の特徴および長期的利益に関連する全分野の中核を反映するものである」とし、「優良企業やその実績ある最高経営責任者(CEO)でさえ何らかの形でその利益が中国共産党の優位性や方針の障害・脅威となった場合は、中国共産党を保護するために犠牲にされる」と述べている。 観測筋によると、国内に向けた宣伝活動が明らかに激化していることから、まもなく中国共産党は同様の作戦を西側諸国や他地域にも展開すると考えられる。
「How China Sees the World: Han-Centrism and the Balance of Power in International Politics(仮訳:中国の世界観:漢人中心主義と国際政治における勢力均衡)」の共著者であるブラッドリー・A・セイヤー(Bradley A. Thayer)博士と公民力量(Citizen Power Initiatives for China)の副社長を務める韓連潮(Lianchao Han)博士が、2021年6月に米国の政治専門紙「ザ・ヒル」に掲載された意見記事で述べたところでは、中国に関する宣伝が不十分であるために否定的な報道が食い止められないとして習主席は自国の国外向け宣伝部に対して不満を表している。
記事には、「中国は国際交流プログラムと国際会議の機会を増やすことを計画している。その宣伝活動を通して、音楽、芸術、北京語教育などの中国文化プログラムを強力に利用して対象国の人々を引き込むと考えられる」および「習主席のイデオロギー戦争の本質は共産主義政権のイメージを美化することにある。そのために中国の人権侵害行為に関する真実を欺いて抑圧しなければならない。世界中の人々の心を掴むことが目標である。これはおそらく失敗する運命にあると思われるが、中国の『羊の皮を着た狼』という最近の宣伝策略は危険であり世界諸国は警戒を怠るべきではない」と記されている。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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