国連の気候変動問題担当特別顧問セルウィン・ハート氏は5日、キャンベラでの講演で、石炭火力を2030年までに廃止しなければ、気候変動は豪経済全体に大打撃を与えると警鐘を鳴らした。これに対し、オーストラリア政府は6日、石炭の産出と輸出を2030年以降も継続するとの認識を表明した。
国連は、石炭火力への依存度が高いオーストラリアや日本、OECD加盟国に石炭の使用を2030年までに段階的に廃止するよう求めている。いっぽう、世界最大の温室効果ガス排出国である中国には、2040年まで石炭火力発電所の使用を許可していると物議を醸している。
中国がこの2030年石炭廃止計画に含まれていなかったことに対し、豪国民党のマット・カナバン上院議員は、国連の中国への対応は「偽善的」だと述べ、国連がオーストラリアの経済を破壊しようとしていると非難した。
また、労働党のジョエル・フィッツギボン議員は国連が石炭をこの10年間で廃止するよう定めたことは、「オーストラリアの経済や市場を十分に理解していない」と批判した。
オーストラリアは世界第2位の石炭輸出国。オーストラリア統計局によると、炭鉱と石炭火力発電所の労働者は約5万人近くに上り、主要な働き口となっている。また、オーストラリアの過去5年間の石炭輸出額は約2800億豪ドル(約23兆円)で、オーストラリアの総輸出額の約16%を占める。
フィッツギボン氏は、オーストラリアでは再生可能エネルギーへの移行が加速していることを強調し、エネルギーの安全保障を確保するためには「10年以上に渡って、石炭火力発電を稼働させなければならない」と述べた。
中国は2030年までに石炭消費量を減らすと宣言しているが、エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)によると、中国は去年、平均週1基のペースで大型石炭発電所を建設していることが判明。世界各国の合計数を合わせても、3倍以上の新規石炭火力発電所を建設していることになる。
さらに中国は、16日間でオーストラリアの1年分の排出量を上回る二酸化炭素を排出している。ジョン・ケリー米大統領特使は2日、中国で続く石炭火力発電所の増設が世界の環境目標達成に向けた取り組みを「取り消す」恐れがあると懸念を表明した。
(翻訳編集・山中蓮夏)
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