米国のシンクタンクが発表した新たな報告書によると、数百隻の中国海上民兵の船舶が継続して南シナ海の紛争地帯で活動しており、これは「国際法に根ざした海上秩序」への著しい挑戦となっている。
ワシントンD.C.に拠点を置く戦略国際問題研究所(CSIS)は、中国共産党(CCP)が長年にわたり南シナ海での主張を主張するために民兵組織の拡大に資金を提供していると述べている。
2021年11月に公表された報告書「中国の海上民兵の内幕を暴露する(Pulling Back the Curtain on China’s Maritime Militia)」でCSISは、紛争海域で中国の政治的目的を達成するために中国の法執行機関や軍隊と共に活動していると思われる部隊の包括的な概要を提供した。
これは紛争の可能性を回避しようとしながらも、戦略的な利益を追求するために通常とは異なる武力と戦術を使用する「グレーゾーン戦術」として知られている。
報告書によると、近年大規模な港湾施設を備えた中国の前哨基地が作られたことにより、係争中のスプラトリー諸島に航行する海上民兵の船舶が急増した。同報告書の主張によると、「全体的な状況は、2018年8月以降スプラトリー諸島周辺に約300隻の海上民兵の船舶が大きな集団となって展開しており、物流支援は中国の人工島に頼っているが、それらの港湾内に引きこもっているわけではない」という。
報告書によると、民兵の船舶は「軍事仕様に従って船舶を建造しそれを運用することで現地民を奨励する」補助金を通じて中国政府が資金提供している。筆者たちは、「南シナ海の係争海域にいる中国の漁船の大半は、独立した商業者としてではなく、中国政府の政治的および国家的安全保障の目標の達成を支援する義務のある公僕として活動している」と結論付けた。
さらに報告書には、南シナ海で活動しているとされる112隻の中国の民兵の船舶と「民兵の船舶である可能性が高い」52隻のリストが記載されている。中国政府はまだこの報告書に反応していないが、海事研究で著名な中国の学者は、「いくつかの論理的および方法論的な問題」を挙げて大部分の調査結果を否定している。
ラジオ・フリー・アジアはこれまで、中国企業の記録、入札書類および中国国営メディアなどの情報から、多数の「漁師」が中国共産党の前哨基地を警備する責任を負っていると判断してきた。
CSISの研究者は、公的に入手可能な中国のメディア、公式文書および声明を調査した結果、「海上民兵に資金を提供するために近年実施された中央および地方政府の広範なプログラム」を発見している。
同報告書は、「既存の補助金政策は紛争海域での大型船舶の運航を奨励するだけで漁業を奨励するものではない」と主張して、その例として55メートルを超える船舶に対する特別燃料補助が「船舶の所有者が漁業を行わなくても紛争海域に展開することだけで容易に利益を上げることを可能にする」と指摘している。
報告書は、2016年にスプラトリー諸島の人工島前哨基地の建設を完了して以来、中国共産党は南シナ海全体の平時活動を管理下に置くことに焦点を移しており、海上民兵はこの転換の重要な構成要素であると述べた。
以降、スプラトリー諸島の紛争海域には定期的に民兵の船舶が多数展開された。近年の大規模な展開は2021年3月にユニオン堆(Union Banks)の牛軛礁(Whitsun Reef)付近に約200隻の民兵だと思われる船舶の集結で、中国とフィリピンの間で外交問題となった。
同報告書によると、中国共産党による現代的な漁業民兵の動員は、数隻の民兵の船舶が南ベトナム軍から西沙諸島(Paracel Islands)を奪取するために動員された1974年にまで遡る。
同報告書によると、海上民兵は2012年の中国によるスカボロー礁(Scarborough Shoal)の奪取以外にも、2014年のベトナム海域に中国が海底石油掘削装置の設置などでも重要な役割を果たした」と述べている。スカボロー礁はフィリピンの支配から最終的に奪われた。
報告書は、民兵の船舶の数と迅速な展開が「南シナ海における平時の勢力均衡を根本的に変えた」と結論付けている。
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