中国艦艇同士衝突で2人死亡 フィリピンが領有権問題を批判

2025/09/19 更新: 2025/09/21

南シナ海のスカボロー礁周辺で中国艦艇同士が衝突し、船員2人が死亡。フィリピン政府は「領有権侵害」と批判し、緊張が高まっている。

フィリピン国家安全保障担当顧問エドゥアルド・アニョ氏は9月18日、先月発生した南シナ海における追跡行動の際、中国の艦艇同士が衝突し、少なくとも中国人船員2人が死亡したと発表した。この事件は中国共産党当局にとって大きな打撃となり、さらに中共当局がその後、紛争海域での管理行動を一層強化していると指摘した。

アニョ氏は記者会見で「中共当局は自国民に対してきちんと説明しなければならない」と述べ、中国海警局と海軍が8月にフィリピン沿岸警備隊の船を追跡中に衝突した事実を挙げ、「これは中共軍と海警にとって極めて不名誉な事態である」と語った。

同氏は「報道によれば」と前置きしつつ、中国側の人員が死亡したと述べたが、詳細は明らかにしなかった。一方、中国外務省の林剣報道官は「フィリピンが中国の主権を重大に侵害し、中国人員の安全を深刻に脅かした」と主張したものの、死亡者に関する報道には触れなかった。

フィリピン当局は事故後、巡視映像を公開した。映像では8月11日、フィリピン沿岸警備隊の「スルアン号」がスカボロー礁海域で任務に就いていた際、中国海警局「3104号」と中国海軍艦「桂林号」に挟み撃ちされる様子が映っていた。桂林号が高速で割り込み、その際に3104号と衝突した結果、3104号の船首が大破して航行不能に陥ったことが確認できる。桂林号の損傷は軽微であったが、左舷には明らかな衝突痕が残っていた。

フィリピン側は無線で救助を申し出たが、中国側は応答しなかった。約1時間後、中国側は補給艦「鴻鵠号」と複数の民兵船を派遣し、現場で捜索を行った。フィリピンのパンフィロ・ラクソン上院議員によれば、中国海警局の船員2人が死亡したという。さらに、中国版ツイッター「微博(Weibo)」では軍事関連アカウントがろうそくの絵文字を3本投稿し、死亡者が3人に上る可能性を示唆していた。

中共当局の情報規制と軍事行動

事件が発生したのは、中国政府が9月3日の軍事パレードを控えていた時期であり、中共当局は情報を厳重に封鎖し、国内メディアの報道はほとんどなかった。

今週に入り、中国海警局は再びスカボロー礁海域でフィリピン漁業局の船に放水銃攻撃を行い、船体が損傷し乗員1人が負傷した。中国側はフィリピン船が「中国領海に不法侵入した」と主張した。

アニョ氏は「中国側はあらゆる手段を使って我々のスカボロー礁への接近を阻止しようとしている」と批判した。

さらに先週、中共当局はスカボロー礁を「国家級自然保護区」に指定すると発表した。これに対しフィリピン政府は外交抗議を行い、主権の侵害であり、国際法に違反すると主張した。

スカボロー礁はフィリピン・サンバレス州から約120海里の距離に位置し、重要な漁場である。中国は2012年から実効支配を続けているが、この礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)に含まれる。2016年、常設仲裁裁判所は中国の「九段線」を無効と裁定したが、中国はこれを認めず海警による巡視を継続している。

アニョ氏は改めて「スカボロー礁はフィリピンの領土であり、その主権を守る責任がある。暴力は避けるが、決して譲歩はしない」との立場を表明した。

中国は南シナ海のほぼ全域で主権を主張しており、その主張はフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシアの経済水域と重なっている。アメリカは8月13日に軍艦をスカボロー礁近海へ派遣し、フィリピン支援の姿勢を示した。

李言
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