米国務省は12日、南シナ海をめぐる中国の主張について報告書を発表した。「中国は南シナ海の大部分において不法な海洋権益を主張している」と結論づけ、違法かつ威圧的な活動を停止するよう求めた。
国務省は声明のなかで、南シナ海の歴史的権利を主張する中国を批判し「国連海洋法条約に反映されているような国際法との海洋権益を合致させるよう求める」と明記した。また中国が独自に策定した南シナ海のほぼ全域を囲う境界線「九段線」には法的根拠がないとし、2016年7月のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決を順守すべきだと述べた。
国務省がまとめた47ページの報告書には、中国の海洋主権の主張などが国際法と矛盾していると反論する内容も含まれた。例えば、中国が管理権を主張する100カ所以上の海底地形は、国が領海として定める「法的権限を超えている」と否定。中国の不法な主張は「海洋における法の支配を著しく損なっている」と非難した。
米政府は南シナ海をめぐって中国に厳しい目を向けてきた。2020年7月にはポンペオ前国務長官が中国の海洋主権の主張は「完全に違法」だと述べ、米国として中国の主張を初めて公式に否定した。また、九段線については「中国は筋の通った法的な根拠を出していない」と断じ「略奪的な中国の世界観は21世紀にはあり得ない」との見解を示した。
昨年4月にワシントンで行われた日米両首脳会談では、台湾海峡の安定や南シナ海問題などに言及した共同声明を発表。バイデン大統領は会談後の共同会見で、南シナ海や東シナ海における中国の挑戦に対抗していくとした上で「日米が共有する安全保障を断固として支持する」と述べ、中国を牽制した。
7日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも東・南シナ海で軍事的圧力を強める中国を念頭に日本の防衛力強化に向けた取り組みを協議し、中国に対抗する姿勢を示した。
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