[ワシントン 9日 ロイター] – バイデン米大統領は9日、100カ国・地域以上の首脳らを招き、オンライン形式の「民主主義サミット」を初めて開催した。バイデン氏は、権威主義が台頭する中で権利と自由を守ることは今の時代の「決定的な課題」であるとし、世界の民主主義強化を訴えた。
冒頭演説で、世界の自由は権力拡大や抑圧の正当化などを求める独裁者の脅威にさらされていると指摘。「われわれは歴史上の変曲点に立っている。権利と民主主義の後退を野放しにし続けるのか。それともビジョンと勇気を共に持ち、人類の進歩と自由をもう一度前進させるのか」と問いかけた。
その上で「民主主義は偶然に起こるものではなく、世代ごとに更新していかなければならない」とし「個人的な見解では、これはわれわれの時代の決定的な課題である」と主張した。
中国やロシアを非難することはなかった。
サミットには111人の首脳らが参加。2日間の日程で行われる。権威主義的な中国やロシアは招待国に含まれていない。一方で、台湾のほか、人権団体から首脳陣が権威主義的な傾向を持っていると非難されているフィリピン、ポーランド、ブラジルなどは含まれている。
米ホワイトハウスは、世界中の民主主義を強化するための新たなイニシアチブに4億2440万ドルを提供することを巡り議会と協力していると発表した。このイニシアチブには独立系ニュースメディアへの支援も含まれるという。
また、イエレン財務長官は、米国はマネーロンダリング(資金洗浄)や金融面での不正、脱税などを取り締まっていると表明。「富裕層が何のおとがめもなしに法律を破れるようでは、海外政府に自由かつ公正な政治を求めることはできない」と述べた。
国内外の汚職撲滅のために米財務省が大きな役割を果たすべきだと述べ、外国の指導者が米国内に隠し持つ資金に関する情報提供に報奨金を出すための新たな「クレプトクラシー(泥棒政治)基金」を発表した。
中国外務省の報道官は、台湾が招待されたことについて、米国が「地政学的な目標を推し進め、他国を抑圧し、世界を分断し、自らの利益を得るための隠れみのや道具」として民主主義を利用しているだけであることを示している、と非難した。
ホワイトハウスはこれに反論。政府高官は記者団に対し「今回のサミットは特定の国に関するものではない。われわれは民主主義的な機運を高めようとしていることをサミットで強調している」と語った。
米当局者らは今回のサミットで、プライバシー保護強化や検閲回避に向けた技術の活用といったグローバルな取り組みへの支持を得たい考え。また、2022年終盤に予定される対面式のサミットに向け、各国が民主主義を強化するための具体的な公約を示することにも期待している。
ゼヤ米国務次官(民間安全保障・民主主義・人権担当)は、市民社会が米国を含む各国の責任を追及する一翼を担うだろうと述べた。公約を果たさない首脳の招待を取り消すかどうかには言及しなかった。
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