中国共産党機関紙・人民日報はこのほど、改革開放に関する評論記事を発表し、元指導者である鄧小平、江沢民と胡錦涛らの功績を称えた。記事は習近平総書記について言及していない。景気が急速に悪化しているなか、習氏の経済政策について党内から不満が噴出しているとの見方がある。
人民日報は9日、理論面に『改革開放は党の偉大なる覚醒である』と題した記事を発表した。記事を作成したのは共産党中央党史および文献研究院の曲青山院長。
約4000字に及ぶ記事は、改革開放政策における鄧小平、江沢民、胡錦涛らの貢献を振り返った。鄧小平は文化大革命終焉後、「間違いを正し」「鄧小平理論を掲げ」、「中国の特色ある社会主義を切り開くのに成功した」と強調した。江沢民について、「三つの代表」という理論を提唱し、社会主義市場経済体制の基本的な仕組みと改革目標を確立し、「中国の特色ある社会主義を21世紀に推し進めた」と称賛した。さらに、胡錦涛は「新たな情勢の下で中国の特色ある社会主義を堅持し、発展させた」と評価。
記事には、習近平氏についての記述はなかった。
香港の時事評論家、林和立氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、人民日報の評論記事が習近平氏について触れなかったのは「不可解で、異例なことだ」と示した。
中国共産党は11月の重要会議で、毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の「歴史決議」を採択し、党内において習近平氏は毛と鄧に並ぶ地位を確立した。来年の党大会で、習氏が3期目続投を目指すための布石だとみられた。
林和立氏は、同記事は、党内の習近平反対派ではない人々も、ここ数年の習氏の経済・政治政策が「鄧小平の経済路線に背いた」と不満を強めていることを反映したとの認識を示した。
林氏は、「記事の一部内容は第3の『歴史決議』を引用したが、習近平氏の名前に全く触れなかった理由は2つある」と話した。1つは、作者が「改革開放」の歴史だけに焦点を当て記事を書き上げた。2つ目は、作者は江沢民や胡錦涛と比べて、習氏はこの9年間、改革開放においてはっきりとした功績をあげていないと考えている。
時事評論家の五嶽散人氏は、中国経済の失速が原因で共産党内部の権力闘争が激しさを増しており、習政権への不満が高まっていると指摘した。「人民日報の理論面の内容は、同紙一面に載せる内容よりも重要である。理論面は直接、党の政策方針や指導思想を反映するからだ」とRFAに語った。
同氏は、習政権の経済、外交などに関する政策に対して、「党内の習近平反対派でない人も、我慢できずに不満が爆発したのだろう」「党内では、習近平の路線は改革開放に逆行しているとの声が上がっている」と考えを示した。
いっぽう、10日に閉幕した共産党中央経済工作会議では、国内経済は「需要の低迷、供給ショック、市場の期待の低下」という三つの圧力に直面していると示した。会議の内容をまとめた5000字のニュースリリースには、「安定」という言葉が25回も現れた。中国最高指導部は来年の経済政策方針を巡って、「安定を最優先にし、安定の中で前進を求める」と明示した。
楼継偉・元財政部長(財務相)は11日、北京で開催された「2021~22年中国経済年会」に出席し、当局の統計データは「良い状況しか表していない」と述べ、データの信ぴょう性について批判した。
(翻訳編集・張哲)
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