中共政策「ゼロコロナ」で再び流行リスク

2022/01/27 更新: 2022/01/27

北京冬季五輪を目前に控える中国共産党は、ウイルス感染防止に厳格な封鎖措置を含む「ゼロコロナ」政策を固守している。伝染力は高いが重症化リスクが低いとみられるオミクロン株が世界的流行の主流となったいま、抗体獲得の機会が得られなかった中国国内では再度の流行リスクに直面するとの見方がある。

物々交換する人々

中国国営メディア・新華社は24日、現地防疫当局の話として、23日まで陜西省の西安市内で中共ウイルス「高危険」または「中危険」に指定されていたすべての地域が同日付で「低危険地域」に再分類したと報じた。人口約1300万人の大都市、西安の封鎖は事実上1か月ぶりに解除された。

中国共産党はコロナとの共生ではなく「コロナとの戦い」を掲げ、強圧的な封鎖を固守している。しかし、食糧調達にも支障が生じ、住民の間では不満がくすぶっているのがSNSで見て取れる。

住民たちがタバコをキャベツに、食器洗浄剤をリンゴに、ナプキンをいくつかの野菜へと「物々交換」する様子を撮影した動画や写真が中国大手SNS微博に投稿されている。

華商報の元記者で現在はフリーライターの江雪氏は、封鎖中の西安の様子や当局のコロナ政策に対する批判を含むルポ「長安10日」を12月末に自身のSNSで発表した。

西安に住む江氏によると12月27日、市の封鎖令のレベルが一層厳しくなり、買い物目的の外出さえ許されず、誰も居住団地外に出られなくなったという。翌28日から「食べ物が手に入らない」との西安市民の書き込みがネット上に多く書き込まれた。

江氏は「1300万人の運命に及ぼす影響を考えたことがあるだろうか」と現政権への批判を書き込んだ。

ゼロコロナ政策で抗体獲得機会減 効果低い中国製ワクチンも問題

中共ウイルスに対する共産党政権の強硬対応は感染抑制効果を得たものの、人がウイルスに接する機会を極端に減らしたため、オミクロン株に脆弱になった可能性がある。

米国シンクタンク・ユーラシアグループは3日に発表した「グローバルリスク報告書2022年版」で、「中国はコロナ防疫成功の『被害者』になる」と一見背反した評価を下した。

報告書によると、すでに先進国では高い接種率と死亡率の上昇を防ぐ治療法の開発などでウイルス拡散が終息局面に入るとの見方が強い。いっぽう封鎖措置の厳格な中国では流行は収まりにくいという。

伝染力は強いが重症化リスクは低いオミクロン株に対して、世界各国では感染者数より入院する人と基礎疾患を持つ患者に対するケアに防疫体制を転換している。対照的に、強制的な封鎖を続けてきた中国人の大多数はオミクロン株に対する抗体を獲得する機会は失われた。

報告書は「この2年間、主に封鎖と防疫措置にだけ依存してきた中国が国境を再び開放するのはもっと危険だ」と指摘した。

脆弱性の背後には効果の低い中国製ワクチンの問題も指摘されている。中国はワクチン開発の成功で他国に先駆けて14億人に対する大規模なワクチン接種を実施した。しかし、最近の研究では欧米で使われているmRNAワクチンより効果が低いとの研究報告が出ている。

ユーラシアグループのイアン・ブレマー会長は「中国製ワクチンの効果が限定的なため、ゼロコロナ政策にもかかわらず、中国はオミクロン株の拡散を抑制することはできない」と指摘。流行リスクは深刻な封鎖措置につながると分析した。

中国共産党政権は北京冬季五輪の次に5年に1度の党大会が秋に開かれる。異例の習近平主席の3期目就任を控え、コロナ封じ込めで「失敗は許されない」と党内の緊張も続くとみられる。厳しい封鎖が続く要因はいくつも並んでいる。

崔潤水(CHOI YUNSU)