<北京五輪>帰化選手や一時資格停止の審判の採用 メダルラッシュ狙う中国当局

2022/02/10 更新: 2022/02/10

4日に開幕した北京冬季五輪では、開催国・中国を巡って物議が絶えない。中国代表選手の中に、海外で生まれ、中国籍に帰化した選手が多くいることが注目されている。しかし、帰化選手に対する中国メディアや国内世論の対応は明暗が分かれた。中国当局は帰化選手を起用しメダル数を増やすことで、国民の愛国主義感情を高めようという狙いがあるとの指摘がある。

中国当局は今回の大会に総勢174人の選手団を派遣した。人数としては過去最多。

中国メディア「観察者網」3日付によると、中国国内ではアイスホッケー中国代表の帰化選手の多さに驚きの声が上がっている。アイスホッケー男子チーム25人のうち、帰化選手は15人いる。女子チーム23人のうち、帰化選手は13人。この28人の帰化選手のうち、22人は中国人の親、または祖父母が中国人だという。

帰化選手の中で特に注目されているのは、フリースタイルスキーの新種目ビッグエア女子の谷愛凌(Eileen Gu)選手(18)。谷選手は8日、同種目で金メダルを獲得。

谷選手の金メダル獲得後、北京冬季五輪組織委員会、中国官製メディアなどは相次いで、谷選手を「天才少女」と呼び、ビッグエア競技で中国に初めてのメダルをもたらしたことを称賛した。

共産党員の汚職行為を取り締まる中国共産党中央規律検査委員会(中規委)も8日、同ウェブサイト上で4日に行われた谷選手のインタビュー動画を公開した。谷選手の母親への取材も掲載した。

ただ、谷選手は国籍問題について疑惑が浮上している。谷選手はメディアの取材に対して、「アメリカにいる時、私はアメリカ人である。しかし中国にいる時は中国人である」と言葉を濁した。

中国は二重国籍を認めていない。谷選手が実際に米国籍を放棄し、中国籍に帰化したかは依然として不明である。

米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は谷選手の国籍問題をめぐって米財務省のウェブサイトで検索したが、同選手が米国籍を放棄した情報を見つけられなかったとした。

谷選手は中国語を流暢に話し、優秀な成績で米名門スタンフォード大学に進学した。ファッションモデルとして23の国際ブランドのイメージキャラクターを務めていることで、中国で絶大な人気を博している。SNS微博(ウェイボー)では、ユーザーらは谷選手に「スキーのプリンセス」と愛称を付けた。

谷選手と対照的になっているのは、フィギュアスケート女子の朱易選手(19)。朱選手は2018年に米国籍を放棄した。6、7日のフィギュアスケート団体戦に出場した同選手はミスが相次ぎ、中国チームの足を引っ張ったとして、ネット上で大バッシングを受けている。微博では、「#朱易が転倒した」との投稿は2億回閲覧され、「まず中国語をちゃんと話せてから、愛国者と名乗りなさい」などと手厳しく批判した。

台湾国防安全研究院の侍建宇副研究員はRFAに対して、スポーツの国際大会ではナショナリズムをめぐって「偏見や対立」が生じやすいと指摘した。

「欧米各国が北京冬季五輪の外交ボイコットを実施しているなか、中国当局は今大会を通じて、ナショナリズムの高揚を一段と強化したい狙いがある」

現在、米国や韓国などでは、5日と7日に行われたスピードスケート・ショートトラックで、中国選手に有利な判定が行われたとの批判が殺到している。

また、7日のスキージャンプ混合団体では、スーツ規定違反により、日本のエースである高梨沙羅選手を含む5人が失格となった。各国メディアは「茶番だ」と糾弾している。

2018年の平昌冬季五輪で、中国選手に露骨なバイアス判定を行ったとして国際スケート連盟(ISU)から1年間資格停止された中国人審判、黄峰氏が、北京冬季五輪のフィギュアスケートの技術監督を務めていることも物議を醸した。欧米の世論は、中国当局の金メダルを増やす手段の1つであると非難した。

侍氏は、中国当局は中国のメダルラッシュを実現させることで国民の愛国感情を高める上、国内に共産党政権支配の正当性を強調する目的もあるとの見方を示した。

(翻訳編集・張哲)

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