新型コロナワクチン接種義務化に反対するトラック運転手とその支持者らによる抗議運動「フリーダム・コンボイ」に対処するため、カナダのトルドー首相は14日、政府に強い権限を与える緊急事態権限の発動を表明した。
トルドー氏は記者会見で、抗議行動は平和的ではなく経済に害を及ぼしているため、法執行機関を強化するための措置が必要だと述べた。緊急事態法の発動は1988年の制定以来初めて。
「金曜日に、オンタリオ州は(抗議活動による)封鎖に対応するために緊急事態権限を発動した。これは責任のある必要なことだった。今日、これらの努力を継続させるため、連邦政府はより多くの手を打ち状況を完全にコントロールするための準備ができた」とトルドー氏。
緊急事態権限の発動には時間的制限が設けられ、空港や国境通過のポイントなどの重要インフラを保護するために使用されるという。
フリーランド副首相は抗議運動への資金提供を制限する政策を打ち出している。マネーロンダリング対策に使われる法規制をクラウドファンディングやデジタル通貨に拡大して適応する。銀行も、抗議活動に関与した事業体の口座を凍結することができるようになる。
フリーランド氏はまた、封鎖に関わるトラックが所属する企業に対して口座の凍結や保険の停止も辞さないと警告を発した。
反対する州も
いっぽう、アルバータ、サスカチュワン、マニトバ、ケベックの4つの州は、トルドー氏による緊急事態法の使用を支持していないと表明した。
アルバータ州のジェイソン・ケニー知事は「私たちは秩序を維持するために必要な法的手段とリソースを持っている。緊急事態法は、追加の権限やリソースを提供しない」と14日にツイートした。
サスカチュワン州のスコット・モー知事は、警察は法執行するために十分な権限と能力を持っているとし、「サスカチュワン州は、緊急事態法を発動するトルドー政権を支持しない。連邦政府がこの措置を推進する場合、法律で許可されているように、発動を求める州のみの適用を願っている」とツイートした。
14日の記者会見で、抗議活動「フリーダム・コンボイ」の主催者であるタマラ・リッチ氏は、抗議者たちはその要求が満たされるまでデモを続けるとし、「私たちは平和を維持するが、義務化が解除されるまで議会の丘にとどまる」と述べた。
この抗議活動のスポークスパーソンを務める、ニューファンドランド州のブライアン・ペックフォード元知事は記者会見で、首都オタワでの抗議活動は平和的であり、緊急事態権限発動の正当性に疑問を呈した。
「特にここオタワでの抗議活動に関しては平和的だ。大通りはきれいで、トラック運転手が到着してから犯罪は減っている」とペックフォード氏は述べた。
緊急事態法について
1988年、緊急事態法は戦時措置法の代わりとして制定された。戦時措置法は1970年10月、ケベック州分離主義者が同州の副首相を務めたピエール・ラポルト氏を誘拐し殺害した際に、トルドー首相の父で元首相のピエール・トルドー氏によって発動された経緯もある。
現行の緊急事態法は、国家緊急事態について次のように定めている。
一時的な性質を有する、緊急かつ重大な状況であり、a)カナダ人の生命、健康または安全を深刻な危険にさらし、州の対処能力または権限を超えるような割合または性質を持ち、または、(b)カナダの主権、安全保障および領土の完全性を維持するカナダ政府の能力を深刻に脅かすもの。
同法の定める緊急事態には4つのタイプがあり、それぞれ公共の福祉、公共の秩序、国際的な緊急事態、そして戦争だ。
緊急事態法によれば、治安妨害につながる可能性があると「合理的に予想」できる場合、市民の集まる権利を剥奪することが可能になる。政府は、人々に対し指定された地域への移動や特定の資産を使用することを禁止することもできる。
トルドー氏は今回、「カナダの安全に対する脅威」を理由に、緊急事態権限を発動した。
緊急事態は、政府によって取り消されたり延長されたりしない限り、30日で期限を迎える。ロイター通信によると、緊急事態権限の発動には7日以内のカナダ議会の承認が必要となるほか、議会には発動の決定を無効とする権限がある。
緊急事態法に従わない場合、陪審のない裁判で500ドル以下の罰金または6か月以下の懲役のほか、正式に起訴されれば5000ドル以下の罰金および5年以下の懲役となる可能性がある。
(大紀元記者Noé Chartier・Omid Ghoreishi/翻訳・王文亮)
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