英国の出版社2社が、中国での印刷業務を円滑に進める目的で、自己検閲を行った。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は15日、消息筋の話として報じた。
西側読者向けの著書の中で「台湾」や「香港」「チベット」などの内容に編集を加えたという。「中国の言論検閲が西側まで拡大した」と批判する声が上がっている。
「台湾人」が「東アジア人」に
自己検閲を行ったとされる2社は、英出版大手アシェットブックス(Hachette Books)傘下の「Octopus Books」、及びロンドン証券取引所に上場する「クアルト(Quarto)」社。
「Octopus Books」は2020年以降、少なくとも2つの書籍から台湾関連の内容を削除した。うち1冊は台湾と関連する章節の全部をカットしていた。
「Quarto」もニューヨーク・タイムズのベストセラー『This book is Anti-Racist(邦訳:人種差別反対主義の本)』(2020年)から、香港に関する内容や中国の反体制派芸術家、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏の内容を削除した。
「Quarto」出版の別の書籍でも「Taiwanese(台湾人)」を「East Asian(東アジア人)」に、チベットに関する描写も「チベットは中国領土の一部」と強調する形で書き換えられていた。
英出版社が自己検閲を行ったのは、印刷コストの低い中国で印刷業務を円滑に進める目的とされている。
「外国企業が利益のために中国の検閲制度に積極的に協力した」と香港浸会大学の閭丘露薇教授は指摘した。
中国の検閲が西側に拡大
中国には厳しい出版・印刷制度があるため、西側作家や出版社は、中国の読者向けの著作の内容を変更することは多い。
「中国の印刷業者が作家や出版社に無断で、英文著作を変更するケースも少なくない」と独立中国ペンクラブ(ICPC)事務局長の張裕氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューで指摘した。
ある中国の印刷業者は、英文著作の台湾(Taiwan)の後に「中国(China)」と付け足し、「台湾が中国の一部である」ことを強調したケースもあったと張氏は例を挙げた。
しかし、今回のように英国の出版社がコスト削減のために自己検閲をするのは「非常に珍しい」という。
「自己検閲を行うことは中国式の検閲を西側にまで拡大させたことになる」と張氏は批判した。
中国の印刷企業のサービスは安いが、検閲を強化し続ける中、「多くのニュージーランド出版社は印刷業務を中国から他国へ移している」と同国メディアの「ニュースルーム」は報じた。
(翻訳編集・李凌)
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