「ヒューゴー賞」審査員が中共に忖度し、台湾、チベット問題など中共(中国共産党)が好まない内容を含む応募作品や中共を批判する作家を審査して、排除したことがわかった。
国際SF(サイエンス・フィクション)小説最高権威であるヒューゴー賞は、2023年に初めて中国の成都で開催された。今回の審査では中共を批判する作家に政治的検閲をかけ、候補に残るだけの票数を得た作家を失格させるなど、審査過程も結果も疑問と論争に包まれている。
ヒューゴー賞審査委員会の審査員であるダイアン・レイシー氏はキャット・ジョーンズ氏(2022年ヒューゴー賞の主催者)との間で交わされた内部メールを暴露した。
メールには、ヒューゴー賞の審査委員が各部門の最終候補作の上位10作品をスプレッドシートにまとめる過程で、作品の内容、さらには作者自身が中共の政治的レッドラインを踏んでいないかどうかを精査していたことが示されていた。
ジョーンズ氏は、自分は最初の審査をやって、最終的な評価には関与していなかったと述べた。彼女は2024年ヒューゴー賞審査員の運営から辞任し、公表されている審査員リストからも削除されたと報じられている。
また2023年審査委員長だったのデイブ・マッカーティ氏は、レイシー氏に送った2023年6月5日付の電子メールの中で、候補者を審査する際、「授賞式が中国で開催されることを念頭に置く」、そして審査する作品が中共の「現地の法律や規則」に準拠する必要があると指示していた。
外部からの疑念の声が上がり、マッカーティ氏はFacebookでヒューゴー賞審査委員会は中共政府と公式なやり取りをしていないと述べた後、2024年1月、ヒューゴー賞審査委員長を辞任した。
レイシー氏は謝罪声明で「中国、台湾、チベット、あるいは中国で問題になる可能性のあるその他のテーマに焦点を当てた作品の候補者を精査するように言われ、恥ずかしいことに、その通りにした」と述べた。
現時点で、ヒューゴー賞はメディアからのコメント要請には応じていない。
検閲の影響を受けた作家たちの反応
SF作家ニール・ゲイマン氏、R・F・クアン氏、シラン・ジェイ・ザオ氏、ポール・ワイマー氏らは最終投票に参加できるだけの票を得ていたが、審査員によって「不適格」とされた。
メールによると、審査員たちは、ワイマー氏が香港や天安門事件についてツイートしていたこと、またYouTuberなどに寄付できるプラットフォームであるパトレオンで中共政府に否定的な見解を示していたことに気づいていた。
ワイマー氏が排除された理由のひとつは、彼が以前にチベットに旅行したことだった。 中共はチベット人に対して虐待的な言動や人種差別的な政策をとっていると考えられている。
「おかしなことに、私はネパールには行ったが、チベットには行ったことはない。 彼らは基本的な事実さえ知らなかった」とワイマー氏は述べた。
また、検閲はヒューゴー賞だけでなく、SFそのものの精神に反すると指摘した。
中国系米国人作家R・F・クアン氏の『バベル、あるいは暴力の必要性』は、「除外された作品」の中で最も注目された作品だ。すでにネビュラ賞最優秀長編小説賞とローカス賞最優秀ファンタジー小説賞の2つのファンタジー・SF賞を連続受賞している。
6月6日付のメールでジョーンズ氏は、『バベル』には「中国について多くのことが書かれている。私はこの本を読んでいないし、中国の政治については詳しくないので、この本が『中国の否定』とみなされるかどうかは言えない」と述べた。
ジョーンズ氏が検閲した対象には、中共政府を批判するクアン氏のソーシャルメディアへの投稿、コメント、ポッドキャスト、チベットへの旅行記なども含まれていた。
クアン氏はXで、ヒューゴー賞の審査委員会は、中国での受賞を完全に拒否するよりも、潜在的な政治的問題がないかすべての候補者をチェックすることを選んだと述べた。
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