米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、米国防総省はこのほど、中国が米政府の中小企業の研究開発に対する助成金制度「中小企業イノベーション研究(SBIR)」プログラムを悪用していると警告した。
報道によると、国防総省が米議会に提出した調査報告書は、中国側が同制度を悪用する8つの事例を挙げ、「国家安全保障と経済競争力を損なう」との認識を示した。
米政府は1982年にSBIRプログラムを導入し、国内の中小企業の科学技術イノベーションを促進してきた。
米国のポリマー太陽電池を開発する会社、ソラーマー・エナジー(Solarmer Energy Inc.)を例に挙げた。同社はSBIRプログラムを通じて米国防総省や他の政府機関から助成金を取得した後、米国内での事業を終了させ、研究開発の拠点や知的財産権の所在を中国北京市にある子会社に譲渡した。この子会社は中国政府が運営する研究所と協力し、国防分野の研究を行っているという。
報告書は、一部の米企業はソラーマー・エナジー社のようにSBIRプログラムから資金を獲得した後、米国内の事業拠点を解散し、中国政府の人材招致計画に参加したうえ、中国軍の関連機関に技術を提供しているとした。中国は米国のハイテク技術を得るために、通常「能力、知識、位置づけ、連邦政府の助成金や投資へのアクセスを確認した後」に、米企業に狙いを定めていくという。
米議会では政府に対し、政府の資金提供を求める技術分野のスタートアップ企業を精査するよう求める声が上がっている。
一部の議員はSBIRプログラムとこれに関連する「中小企業技術移転(STTR)」プログラムの5年間の再承認を求め、立法を目指している。法案は米国の競争力、特に中国に対する競争力を高めることを目的にしている。
中小企業委員会の共和党幹部であるジョニ・アーンスト上院議員(アイオワ州選出)は、国防総省の報告書で概要が示されている国家安全保障と競争力への中国の脅威に対処しなければ、SBIRプログラムの再承認は拒否すると述べた。
アーンスト議員は4日、中国共産党政権に対抗するために真剣に取り組む必要があるとしたうえで、「何十億ドルの資金を、監査や説明責任をほとんど果たしていない研究開発に注ぎ込むことはその答えにならない」と主張した。
米下院の中小企業委員会の委員長を務めるニディア・ベラスケス(Nydia Velázquez)議員(民主党)は、現政策を変更せず5年間プログラムを更新すると提案している。議員は国防総省の報告書について「プログラムの安全性と完全性を確保するための措置を歓迎する」と述べた一方で、「中小企業を傷つけ、米国の技術革新を阻害する」として助成金制度の撤廃に反対した。
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