武漢との提携関係 大阪市長、見直し否定

2022/06/12 更新: 2022/06/12

大阪港と中国の武漢新港の港湾提携をめぐって、松井一郎大阪市長は10日の市議会で、今後も政府の外交方針の下で「(両港)それぞれの利益を追求していく」と述べ、提携関係を維持する考えを示した。木下吉信市議(自民)に対する答弁。

松井市長は、中国の覇権主義と人権侵害が「大問題だ」と述べたうえで、「ネットで騒いでいるような、日本の安全保障の根幹に関わるような話ではない」と提携が港同士の交流を図るためのものだという認識を示した。

昨年12月16日、湖北省政府と日本の民間団体である国際経済貿易促進会が開催した「日本湖北貿易促進説明会」の席上で、両港のパートナーシップ港提携に関する覚書(MOU)の調印式が行われた。説明会のプログラムに「一帯一路」」の文言が入っているため、大阪港が中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に組み入れられるのではないかと懸念の声が広がっている。

木下議員は、民間交流の場で調印することが軽率で、こうした誤解を招いたと批判した。大阪港湾局側は覚書の内容が説明会の趣旨と関係ないと釈明した。

神戸港は3年前、武漢港と同様の協定を結んだ。今年12月に協定の期限が到来するが、更新しないとの決定が下された。

木下議員は神戸と足並みを揃え、市民の不安を払拭する対応をとるべきだとMOUの破棄を求めたが、松井市長は「そこまで言うなら、上海市との姉妹都市関係も見直す必要になる」と反論。「ネットで大騒ぎになることをもって行政の立ち位置に懸念を示すのは大きな誤解を生む」と語気を荒げた。

武漢と関西地方を結ぶ国際コンテナ直通海運航路は2019年末に開通し、中国・欧州間の国際貨物列車「中欧班列」と接続する。2020年12月、日本の貨物が初めて同航路を利用し、中欧班列によって欧州に運ばれた際、先頭車両に掲げられた行先標には「日本ー武漢ー欧州」と書かれていた。中欧班列は一帯一路構想のシンボルとされ、日本も同構想に参加していると印象付ける狙いがあるとみられる。

今回のMOU締結についても、中国側は「一帯一路における国際経済貿易協力の成功例」として位置づけている。

高遠
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